医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

A story half told: a qualitative study of medical students' self-directed learning in the clinical setting (BMC Med Educ 2021)

Liu TH, Sullivan AM. A story half told: a qualitative study of medical students' self-directed learning in the clinical setting. BMC Med Educ. 2021 Sep 15;21(1):494. doi: 10.1186/s12909-021-02913-3. PMID: 34525997.

背景:医学教育者は、学生がトレーニングと実践を通して自らの学習に責任を持てるようにするための重要な手段として、自己主導型学習 (self-directed learning; SDL)を推進してきた。しかし、教室内でのSDLはよく研究されているが、臨床現場でのSDLの障壁や促進要因については、まだ十分に説明されていない。本研究の目的は、学生の臨床研修におけるSDLの経験を明らかにし、地域の社会的・文化的背景が学生のSDLの経験を形成するうえで果たす役割を明らかにすることである。

方法:学生の臨床現場におけるSDLの概念と経験を理解するために、ハーバード・メディカル・スクールの医学生15名を対象とした質的研究を実施した。半構造化されたインタビューは録音され、逐語録化された。解釈主義的アプローチを用い、内容分析のフレームワーク法を用いてデータを演繹的および帰納的に分析した。

結果:参加者は、臨床現場でSDLに取り組む主な動機として、患者ケア活動を挙げた。参加者のSDLに関する記述は、KnowlesのSDLのステップと一致しており、さらに患者の診断と管理に関連した学習の定着 (consolidation of learning)というステップが追加されていた。参加者は、SDLを向上させるために、認知的、社会-感情的、および仲間との学習戦略を幅広く活用していると述べている。成長思考を持つ参加者は、SDLをより簡単に行うことができた。SDLを促進する学習環境とは、教員やレジデントが教育的志向を示し、心理的安全性を促進し、学生の参加を促すような環境である。過剰な労働を強いられるチームは、SDLをサポートしにくいと考えられた。

結論:今回の研究では、臨床研修の場で学生と教員の双方にとって具体的かつ実践的な影響を提供することで、これまでの教室ベースのSDLモデルを強化する。参加者は、臨床現場におけるSDLは患者中心であると述べ、効果的に導入された場合、SDLはパフォーマンス志向ではなく習得志向をサポートすると思われた。本研究は、医学生の臨床におけるSDLを改善し、医学分野における生涯学習者になるための道を開くものである。