医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Towards a medical school curriculum for uncertainty in clinical practice (Med Educ Online 2021)

Papanagnou D, Ankam N, Ebbott D, Ziring D. Towards a medical school curriculum for uncertainty in clinical practice. Med Educ Online. 2021;26:1972762.

背景:臨床環境には不確実性 (uncertainty)がつきものである。しかし、医学生は、臨床現場における不確実性の高い状況に対して明確な準備をしておらず、それが不安やwell-beingに影響を及ぼす可能性がある。このギャップを解消するため、我々は、学生が様々な臨床場面でどのように感じたかを把握し、クラークシップで不確実性を克服する際に役立ったプログラムを特定することで、不確実性を認識し、それを乗り越えるためのカリキュラムをより適切に提供することを目指した。

方法:本研究は、コア・クラークシップ終了時の医学生3年生を対象とした横断的観察研究である。調査は、一般的自己効力感尺度 (GSE)と不確実性の耐性尺度 (Intolerance of Uncertainty Scale; IUS)で構成されている。項目では、臨床現場での心構え、自信、不確実性への対応について評価してもらった。カリキュラムプログラムに関する項目では、クラークシップでの不確実性に備えるための研修内容を尋ね、特定の臨床実践の不確実性領域 (clinical practice uncertainty domains; CPUD)との相関関係を調べた。量的データの分析には、スピアマンの順位相関、カイ二乗、およびANOVAを用いた。自由記述の回答は、Braun and Clarke's Frameworkを用いて分析した。

結果:回答率は98.9% (287/290人)であった。GSEは、IUSと逆相関していた (p < 0.001)。GSEはすべてのCPUDと正の相関があった (p < 0.005)。IUSはすべてのCPUDと逆相関していた (p < 0.005)。不確実性に対する学生の準備、不確実性のあるときの患者とのコミュニケーションと関係構築、総合的なwell-beingと統計的に有意な関係があった教育法は、チームデブリーフィング、ロールプレイ、症例とチームベースの学習、ストーリースラム、同僚や教員とのナラティブの共有などであった (p < 0.05)。質的には、学生はストーリーテリングコミュニケーション戦略ロールモデルデブリーフィング、シミュレーションを高く評価していた。

結論:特定の教育形式を正式なカリキュラムに戦略的に組み込むことで、学生が不確実性に備えるために必要なスキルを培うことができるかもしれない。クリニカル・デブリーフィング、専門家間のロールプレイ、シミュレーション、コミュニケーションスキルのトレーニング、指導者の感情的な弱さ、ストーリーテリング、ピアツーピアの会話などが最も効果的であると考えられる。これらの長期的な影響を評価するには、さらなる研究が必要である。