医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Factors associated with medical students' speaking-up about medical errors: A cross-sectional study (Med Teach 2021)

Chen YC, Issenberg SB, Issenberg Z, Chen HW, Kang YN, Wu JC. Factors associated with medical students' speaking-up about medical errors: A cross-sectional study. Med Teach. 2021 Sep 3:1-7. Epub ahead of print.

背景:医学生潜在的なエラーを目撃したときに声を上げるようトレーニングすることは、患者安全のために重要なコンピテンシーであるが、医学生が効果的にコミュニケーションをとることを妨げる障壁に関する詳細は不足している。そこで本研究では、医療エラーを目撃した際に、患者安全のために声を上げようとする医学生の意思に影響を与える要因を探索することを目的とした。

方法:本研究は、台湾の医科大学における横断的研究であり、クリニカルクラークシップに参加している151名の医学生が、人口統計学的特性、利益相反/社会的関係、個人的能力、および上級スタッフ領域の性格と特性を含む調査に回答した。データはt-testを用いて分析した。

結果:利益相反・社会的関係領域の5項目のうち、「罰せられるのが怖い」(平均差MD = 0.37; p < 0.01)、「暗黙のルールを破りたくない」(MD = 0.55; p < 0.01)、「チームの関係を悪くしたくない」(MD = 0.58; p < 0.01)の3項目が統計的に有意な重要性を示した。個人能力領域の2つの項目(知識・理解の認識、コミュニケーション能力)は、声を上げることに対して有意に重要であった。また、「上級スタッフの性格や特徴」の10項目のうち6項目が、声を上げることを決めるうえで有意に重要であると評価された。そのうち、上位3つの要因は、「不機嫌な (Grumpy)」性格の上級スタッフ(MD = 1.20; p < 0.01)、「階層ギャップ」(MD = 1.12; p < 0.01)、「頑固な (Stubborn)」性格の上級スタッフ(MD = 1.06; p < 0.01)であった。

結論:本研究の知見により、医療エラーの際に声を上げる際の障壁についての医学生の視点が示された。上級スタッフの特性に関連するいくつかの要因は、医療エラーの際に医学生が声を上げる能力を損なう可能性がある。これらの結果は、医学教育者が医学生の患者安全のための発言力に関連する個別の教育活動を設計するうえで重要であると考えられる。