医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Survey of Japanese Medical Schools on Involvement of English-speaking Simulated Patients to Improve Students' Patient Communication Skills (Teach Learn Med 2021)

Ashida R, Otaki J. Survey of Japanese Medical Schools on Involvement of English-speaking Simulated Patients to Improve Students' Patient Communication Skills. Teach Learn Med. 2021 May 30:1-8. Epub ahead of print.

背景:国境を越えた人の移動やメディカルツーリズムの増加に伴い、外国人患者を受け入れるための医療環境の整備が求められる国が増えている。英語圏以外の国の医療従事者にとって、英語での患者コミュニケーションスキルは不可欠である。これは、国内での外国人患者への対応だけでなく、国外での診療を通じたグローバルヘルスへの貢献にもつながりる。日本では1970年代から日本語を話す模擬患者が医学教育に携わり、2005年には客観的構造化臨床試験が正式に実施されてきたが、英語を話す模擬患者 (English-speaking simulated patients; ESSPs)に取り組んでいる医学部は非常に少ない。

方法:日本の医学部におけるESSPsの関与を調査するために、全国調査を行った。クローズドおよびオープンエンドの質問を含むアンケートを80の医学部の学部長に郵送し、現在のESSPの関与と、教育者がESSPとの連携や連携しないことに関して抱えている問題点を調査した。調査は2015年11月から2016年3月まで実施した。データを分析し、医学生の患者コミュニケーションスキルの育成に向けて、ESSPsの関与を強化できるように、ESSPsに関する問題点を見つけた。

結果:60の医学部(回答率75%)から回答を得て分析した。ESSPsを導入している学校は22校、導入を検討している学校は23校であった。ESSPの経歴は様々で、留学生や教員が担当することが多かった。ESSPsの多くは2時間未満のトレーニングしか受けていなかった。ESSPのプログラムは、前臨床年には必須で、臨床年には選択制であることが多かった。医学部は、ESSPsを採用して訓練することや、報酬や旅費を支払うための資金を確保することの難しさについて言及した。

結論:ESSPは、日本の医学部で使用されるようになったが、学校内や地域社会から無造作に採用され、十分なトレーニングを受けておらず、パフォーマンスにも一貫性がない。しかし、日本人以外の英語を話す模擬患者との出会いは、医学生の英語での患者とのコミュニケーション能力(言語能力と文化的感受性)を高めるのに有効であると考えられた。グローバル化した世界で患者の安全性を確保するために、より本格的な実習や高難度の技能試験を導入できるよう、訓練されたESSPsの利用可能性、質、持続性を確保する方法を見つけなければならない。国の多文化化が進み、医療従事者の国際移動が拡大するなかで、ESSPsは外国人医学生や研修生の英語での患者面接スキルをトレーニングし、評価するための貴重な情報源となりうる。ESSPsの地域的な拠点と、世界中の教育者との協力による遠隔医療の利用は、世界中でのESSPsの利用を促進する可能性がある。