医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Training residents in patient-centred communication and empathy: evaluation from patients, observers and residents (BMC Med Educ 2019)

Noordman J, Post B, van Dartel AAM, Slits JMA, Olde Hartman TC. Training residents in patient-centred communication and empathy: evaluation from patients, observers and residents. BMC Med Educ. 2019;19:128.

背景:患者中心のコミュニケーションと共感は、患者中心のケアを実現するための重要な要素である。しかし、いくつかの研究では、医療研修中に医師の共感的コミュニケーション能力に関して低下傾向があることが示唆されている。コミュニケーショントレーニングは、患者中心のコミュニケーション、共感性、関係性のスキルにプラスの効果をもたらすことが知られている。residentに患者中心のコミュニケーションと共感力をトレーニングすることは、患者中心のケアを向上させる機会となり得る。このトレーニングを評価するために、3焦点の視点 (tri-focal perspective)を用いる。

方法:オランダのアカデミックメディカルヘルスセンターにおいて、residentの患者中心のコミュニケーションと共感のスキルを向上させるための3日間の研修を実施した。研修内容は以下の通りである。(1) 患者中心のコミュニケーションと共感の基礎(プレゼンテーション、科学文献を通じて)、(2) 俳優を使った練習、(3) ビデオ撮影したresidentの診察の振り返り(本人とコミュニケーションの専門家による)。このトレーニングを患者と観察者の視点から評価するために、事前事後デザイン (pre-post design)のパイロットスタディを実施した。residentの視点を理解するために、半構造化インタビューを行った。異なる専門分野の9人のresidentがトレーニングに参加し、パイロットスタディに登録した。ランダムな2日間に、residentと患者の間で行われた診察をビデオ録画した。患者は、診察前と診察後に、residentの共感性とコミュニケーションスキルに関する2つのアンケートに回答するよう求められた。録画されたすべての診察内容は、研修医のコミュニケーションスキル、共感性、コンピューターの使用、アジェンダ設定について評価するためにコード化された。統計分析は、マルチレベル分析を用いて行った。

結果:合計137名の適格な患者がパイロット研究に参加した。トレーニングを受けた研修医は、患者が評価した共感度のスコアに有意な改善を示した。観察者によると、研修後、residentのコンピューター使用が大幅に改善した。研修を受けたresidentのコミュニケーション能力は、有意には向上しなかった。residentのアジェンダ設定は減少傾向にあった。ほとんどのresidentが研修に満足しており、特にビデオフィードバックに満足していた。

結論:短時間のトレーニングで、患者から見たresidentの共感度スコアは有意に上昇し、観察者から見たresidentのコンピューター使用量は有意に減少した。これらの知見は、アカデミックメディカルヘルスセンターの研修プログラムに患者中心のコミュニケーションを組みこむことで、患者中心のケアの質を向上させることができることを示している。最終的な目標は、このトレーニングをresidentの教育プログラムに構造的に組み込むことである。