医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

A physician assistant entry-level doctoral degree: more harm than good? (BMC Med Educ 2021)

Kulo V, Fleming S, Gordes KL, Jun HJ, Cawley JF, Kayingo G. A physician assistant entry-level doctoral degree: more harm than good? BMC Med Educ. 2021;21:274.

背景:米国では、ほとんどの医療専門職が臨床博士号 (clinical doctorate)または実践博士号 (practice doctorate)を採用しているため、医師助手 (physician assistants; PAs)が最終的な学位として修士号から博士号に移行すべきかどうかについて、継続的な議論が行われてきた。著者らは、PAの博士号取得をエントリーレベルに移行することで認識されるリスク、利点、および影響について検討した。

方法:文献レビュー、アンケート調査とインタビューによる定量的・定性的データの収集を含む、複数の手法を用いた混合法によるアプローチを行った。二変量解析と二項ロジスティック回帰を行い、エントリーレベルのPA博士号に対する認識・見解と、それがPAの専門職に良い影響よりも悪い影響を与えると予想される影響との関係を評価した。質的データの分析には、演繹的内容分析を用いた。

結果:636名のPA臨床医および学生 (回答率46%)のうち、457名 (72%)がエントリーレベルのPA博士号を必要とすべきではないと回答した。半分以上の回答者 (54%)は、提供すべきだが義務化すべきではないと回答し、380人 (60%)は、エントリーレベルの博士号は利益よりも害が大きいと回答した。人種、学歴、職業、PAとしての実務経験の長さが、害をもたらすという認識を持つことと有意に関連していた。また、博士号取得は害が大きいという認識と、臨床研修先の確保に悪影響を及ぼすという予測との間には、強い正の相関関係が見られた (OR = 4.39, p < 0.05)。最も多く挙げられた利点は他の職業との同等性と競争上の優位性であったが、一方認識されたリスクとしては、教育費の増加、職業の多様性の低下、PAと医師の関係への悪影響などであった。

結論:我々の研究の主なポイントは、認識されたベネフィットとリスクは、ステークホルダーのレンズによって強く影響されるということである。大多数のPAと学生は、主に潜在的な有害性のために賛成していないように見えるが、賛成者の割合は些細なものではなく、彼らの意見を無視すべきではない。主要な利害関係者との懸念に対処することで、PAの専門職が悪影響を最小限に抑えて博士号取得に移行することができるであろう。