医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

A collective case study of supervision and competence judgments on the inpatient internal medicine ward (Perspect Med Educ 2021)

Gilchrist T, Hatala R, Gingerich A. A collective case study of supervision and competence judgments on the inpatient internal medicine ward. Perspect Med Educ. 2021 Jan 25. Epub ahead of print.

背景:コンピテンシーベースの医学教育 (competency-based medical education; CBME)における、職場ベースの評価 (workplace-based assessment; WBA)は、研修生のコンピテンシーを示唆するために、委託-監督尺度 (entrustment-supervision scales)が用いられている。しかし、臨床での監督には多くの要素が含まれており、委託の意思決定には、研修生のコンピテンシー以上のものが反映されている可能性が高い。現状では、監督者の研修生のコンピテンシーに対する印象が、臨床支援にどのように反映されているかについては、まだ十分に理解されていない。我々は、監督のレベルを文書化することが本当に研修生のコンピテンシーを反映するかどうかをより知る必要がある。

方法:臨床教育ユニットの入院病棟に勤務する内科指導医とsenior residentから成る、指導医・研修生ダイアド (dyad)を対象とした、集団ケーススタディを実施した。典型的な日常活動の現場観察と半構造化インタビューを実施した。データを各ダイアド内で分析し、ダイアド同士を比較して、指導医の行動、何がその行動の引き金となったのか、そしてそれがどのように研修生の能力判断に関係しているのかを、明らかにした。

結果:我々は、8つの異なる指導医の行動を特定した。行動は、研修生に関連した要素と、研修生に関連しない要素とがあた。指導医の行動は、たとえダイアド内であっても、研修生の能力評価の変化に対応していた。residentのコンピテンシーに対する指導医の判断の変化は、その後の観察可能な監督行動の変化と、必ずしも一致するとは限らなかった。

結論:監督のためのトリガー、研修生のコンピテンシーの判断、およびその後の監督行動との間には、一貫した関係はなかった。本研究の知見は、監督は複雑であるため、コンピテンシーを監督行動に結びつける委託評価に直接的な意味を持つ。監督行動の根拠を含む、ナラティブデータを捕まえる職場ベースの評価は、数値的な委託評価よりも、深い洞察につながるかもしれない。