医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

The influence of viewing time on visual diagnostic accuracy: Less is more (Med Educ 2024)

Monteiro S, Sherbino J, LoGiudice A, Lee M, Norman G, Sibbald M. The influence of viewing time on visual diagnostic accuracy: Less is more. Med Educ. 2024 Apr 16. Epub ahead of print.

背景:診断エラーを是正・予防するためには、その要因を理解することが重要である。デフォルトの介入主義的認知の二重過程理論(dual-process theory)の影響を受けた学者のなかには、重大な要因として臨床家個人の誤った推論に焦点を絞ることを強調する者もいる。本稿では、二重過程理論がエラー削減の鍵であるという主張の妥当性を検証する。

方法:我々は、胸部X線(CXR)と心電図(ECG)の分類精度に及ぼす臨床経験(スタッフおよびレジデント)と閲覧時間の関係を調べた。2つの研究では、システム1の処理を促すために、175、250、500、1000 msの閲覧時間で提示された画像を、参加者は正常か異常かに分類した。研究2では、システム2の処理と診断のための時間を確保するため、表示時間を1、5、10、20秒に延長した。記述法と反復測定分散分析を用いて、真陽性率と偽陽性率(TPとFP)、および正しい診断の割合を分析した。

結果:研究1では、医師はCXR(0.78)およびECG(0.67)の異常を比較的高い精度で検出できた。経験の影響は心電図でのみ認められ、研究1ではスタッフ医師(0.71, 95%CI = 0.66-0.75)の方がレジデント(0.63, 95%CI = 0.58-0.68)よりも心電図TPが高く、研究2ではスタッフ医師の方がレジデント(0.27, 95%CI = 0.20-0.33)よりも心電図FP(0.10, 95%CI = 0.03-0.18)が低かった。その他の比較では、ECGのFPとCXRのTPおよびFPの経験値は同等であった。研究2では、全体的な診断精度はECGとCXRの両方で同程度であった(0.74)。ECGのTPとCXRのFPについては、経験と時間の間にわずかな相互作用がみられたが、これについては考察でさらに述べ、処理と経験の関係についての洞察を提供する。

結論:全体として、われわれの知見は、処理の種類を診断エラーに関連づけるモデルや、特定の診断エラー削減戦略の実用化について懸念を提起するものである。