医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

"Juggle the different hats we wear": enacted strategies for negotiating boundaries in overlapping relationships (Adv Health Sci Educ Theory Pract 2023)

Gingerich A, Simpson C, Roots R, Maurice SB. "Juggle the different hats we wear": enacted strategies for negotiating boundaries in overlapping relationships. Adv Health Sci Educ Theory Pract. 2023 Sep 7. Epub ahead of print.

背景:専門職の境界線 (professional boundaries)に関する教育が必要であることは一致しているものの、境界線がどのように維持されているかについての研究が不足していることや、境界線をどこに引くべきかについての意見が分かれていることから、医療専門職のカリキュラムの設計は難航している。このような課題に制約された教育課程では、卒業生が実践条件のための正式な準備をしないままになってしまう可能性がある。二重の役割や重複する人間関係はその一例であり、小規模で相互に結びついたコミュニティにおいて日常的にナビゲートしなければならないというエビデンスが積み重なっているにもかかわらず、境界を越えるものとして教え続けられている。本研究では、専門職の境界に関する教育やカリキュラムに情報を提供することを目的として、医師がどのように重なり合う個人的な関係(性的な関係ではない)と専門職の関係をナビゲートしているかを調査した。

方法:構成主義的グラウンデッド・セオリーの方法論に従い、カナダのブリティッシュ・コロンビア州の農村部や北部、あるいは遠隔地の故郷に戻った医師、あるいはそのようなコミュニティで数十年にわたり生活し、診療を行ってきた医師22名に、分析に基づいた反復サイクルでインタビューを行った。

結果:我々は、重複する関係のなかで複数の役割を調整するために医師が説明する4つの戦略を特定した。(a) 現在の文脈に適切な役割を示す、(b) 相互作用を適切な文脈に振り向けることで役割を分離する、(c) 適切な役割を文脈に押し出し、他の役割を背景に引き込むことで役割を切り替える、(d) 関係を終わらせることで干渉する役割を中断する。

結論:重なり合う関係性のなかで境界を交渉するには、役割の衝突を避けながら、役割の明確さと役割の整合性を監視する必要があるかもしれない。制定された役割調整戦略は、専門職の境界に関する教育の議論のなかで批判的に評価される可能性があり、またさらなる倫理研究を通じて分析される可能性もある。