医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

"I Find It Quite a Privilege to Be Involved in Their Lives": A Multinational Qualitative Study of Program Directors' Perspectives on Their Relationships with Residents (Teach Learn Med 2021)

Dutta D, Stadler DJ, Cofrancesco J Jr, Archuleta S, Ibrahim H. "I Find It Quite a Privilege to Be Involved in Their Lives": A Multinational Qualitative Study of Program Directors' Perspectives on Their Relationships with Residents. Teach Learn Med. 2021 Nov 29:1-8. Epub ahead of print.

背景:プログラムディレクター(PD)とレジデントの関係は、レジデントの経験と教育成果を形成するうえで重要である。しかし、これらの関係の発展や意味についての文献は、特にPDの視点からは限られている。本研究では、質的インタビューを通して、PDが研修生との関係を構築・維持するためにどのような役割を果たしているのかを探り、これらの関係がPDの個人的・職業的な影響をどのように与えているのかを明らかにする。

方法:カタールシンガポールアラブ首長国連邦で認定された研修プログラムに参加している複数の専門分野の病院に勤務する元・現職のPD(n = 33)を対象に、半構造化された個別インタビューを用いた質的研究を行った。愛着理論(attachment theory)とナラティブ分析を用いて、新しい役割に慣れるまでの緊張感のなかで、PDがレジデントとの関係構築をどのように認識し、記述しているかを調べた。

結果:PDとレジデントの関係は複雑で多次元的であり、時間とともに変化し、パターンを変え、異なる文脈に対応するために進化していく。PDは、最初に自分の役割を交渉しながら、レジデントやその他の関係者との関係をナビゲートして、自分の専門家としてのアイデンティティを作りあげる。PDは専門家としての同盟関係を築き、レジデントのために専門職とその期待を定義する。レジデントがトレーニングの様々な課題に取り組むなかで、PDの役割は精神的なサポートと擁護の提供へと変わっていく。このサポートと愛着はしばしば永続的で、レジデントトレーニングの期間を超えて続く。

結論:本研究では、教育者と学習者の複雑な関係を交渉するPDの経験を調べた。PDは、自分の職務内容を超えた役割について述べていた。すべてのインタビュー対象者が、PDの仕事は困難であると報告しているが、彼らは仕事のやりがいのある側面と、人間関係がどのように困難を乗り越える支えとなったかに焦点を当てている。PDは、レジデントとの交流から得られる個人的な満足感や利益、そしてその関わりが個人的にも仕事上でも成功につながっていることを考察していた。