医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

The Role of Religious Culture in Medical Professionalism in a Muslim Arab Society (Perspect Med Educ 2023)

Tayeb HO, Tekian A, Baig M, Koenig HG, Lingard L. The Role of Religious Culture in Medical Professionalism in a Muslim Arab Society. Perspect Med Educ. 2023;12:56-67.

背景:イスラム社会では、イスラム文化に由来する概念や実践を医療専門職に統合することが求められている。しかし、これらの宗教文化概念(religious cultural concepts; RCCs)が医療行為や教育にどのような影響を与えるかについてはほとんど知られていない。本研究では、サウジアラビアにおけるRCCsが医療プロフェッショナリズムに与える影響について検討した。

方法:本研究は、構成主義的グラウンデッド・セオリー・アプローチを実施した質的研究である。単一の学術医療センターのサウジアラビア人医師15名を対象に、RCCsと医療プロフェッショナリズムに関する半構造化面接を実施した。性別、世代、専門が異なる参加者を集めるために、合目的的サンプリングを用いた。データの収集と分析は繰り返し行われた。理論的枠組みを策定した。

結果:キーの知見は、(1)医療プロフェッショナリズムにおけるRCCsの役割は、RCCに対する社会的解釈の進化により、常に進化していると認識されている。(2)参加者は、何がプロフェッショナルであるかを判断するために2つの基準(医療基準および宗教文化基準)を適用すると述べた。参加者は、この2つの基準の間を可変的かつ非線形的に移行した。このような変則的な移行は、医療プロフェッショナリズムを形成する価値観を、時には予測できないほど変化させた。

結論:サウジアラビアのアカデミック医師は、RCCsの安定した伝統的な解釈を想定することに反対し、RCCsが医療プロフェッショナリズムに進化的に貢献していることを強調し、医療行為における宗教文化的基準と医療基準の融合プロセスは可変で、医療行為の価値観を変える可能性があると指摘した。したがって、これらの医師は、RCCsは医療プロフェッショナリズムのバックボーンとしてではなく、その補足として有用であると認識していた。RCCsが医療プロフェッショナリズムの価値観に与える潜在的な影響について、慎重な検討が必要であると思われる。