医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Training physicians and residents for the use of Electronic Health Records - a Comparative Case Study between two hospitals (Med Educ 2022)

Humphrey-Murto S, Makus D, Moore S, Duffy KW, Maniate J, Scowcroft K, Buba M, Rangel JC. Training physicians and residents for the use of Electronic Health Records - a Comparative Case Study between two hospitals. Med Educ. 2022 Oct 1. Epub ahead of print.

背景:電子カルテ(Electronic Health Records; EHR)は広く普及しているが、その利点は、医師のトレーニングが不十分であることなどが原因で、明確に実現されていない。EHR使用のためのトレーニングは、ダイナミックな社会技術的医療システムのなかで行われる、非常に複雑な介入である。本研究の目的は、2つの異なる病院におけるEHRのトレーニングと導入に影響を与えた教育活動と組織的要因の相互作用について説明し、批判的に評価することである。

方法:社会技術的なフレームワークに基づき (socio-technical framework)、現実世界のプロセスに適した比較質的事例研究を実施した。カナダの2つのacademic hospitalsの管理職リーダー、スタッフ医師、レジデント、EHRトレーナーからなる半構造化インタビューが行われた(n = 43)。分析にはテーマ分析が用いられた。

結果:両病院とも、導入戦略は異なるものの、同様の所見が認められた。トレーニングが必須であるにもかかわらず、医師はトレーニングの職場への移行が限定的であると述べている。その要因としては、標準化されたベンダーのモジュール(臨床状況に対する特異性がない)、EHRトレーナーの専門知識のばらつき、立ち上げ後のトレーニングの制限、ワークフローの変更に対する準備の不十分さなどが挙げられた。彼らは、患者をケアしながら学習し、回避策を講じたと述べた。また、怒り、フラストレーション、不安、患者を傷つけることへの恐れなど、強い感情的な反応もみられた。

結論:EHRを効果的に活用するための医師のトレーニングには、EHRが臨床ワークフローのあらゆる側面に影響を与えるため、組織文化の変革が必要である。ワークフローを考慮した分析的思考、導入後の継続的なトレーニング、複数の要因の相互依存性を認識することが、効果的な臨床ケアを提供するための医師の準備に不可欠であり、同時にバーンアウトを軽減する可能性もある。教育指導者のための重要な検討事項のリストが提供されている。