医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Into the Unknown: Experiences of Social Newcomers Entering Medical Education (Acad Med 2022)

Sims LR. Into the Unknown: Experiences of Social Newcomers Entering Medical Education. Acad Med. 2022;97:1528-1535.

背景:医療従事者の多様化を図る努力のなかで、医療現場との初期の社会的つながりが果たす役割については、まだ十分に検討されていない。本研究では、医療に従事する家族を通じた医学と早くからつながりのなかった学生(=「新参者 newcomers」)と、よりつながりの深い同級生(=「インサイダー」)の体験の比較を通じて、医学への社会的新参者がアウトサイダーという立場に起因する課題をどのように交渉しているかを調べ、多様性を検証した。

方法:筆者は、2018年から2021年にかけて、構成主義的グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて探索的な質的研究を実施した。医学部1年生2コーホートに対して、医療における社会的つながりについて任意で予備調査を行った後、筆者は、参加の意思を示した学生に対して、その後2年間にわたりインタビューを実施した。インタビューでは、社会的文脈が彼らの医療への旅をどのように形成し、そして現在も影響を及ぼしているかが取り上げられた。80人の2年生と3年生が94回のインタビューに参加し、アウトサイダーとしての地位について長期的な洞察を得るためのフォローアップインタビューも行われた。2年目のインタビュー(新規58人、フォローアップ14人)は、質的な結果の基礎となった。

結果:学生は、主に医学部入学直後という理由でアウトサイダー状態を経験し、大学1年生、地方出身、低所得、人種・民族、非伝統的地位などの交差的な特徴がしばしば複合的に作用していることがわかった。また、社会的再生産理論 (social reproduction theory)に基づき、初期のソーシャルキャピタル不足が内面化され、トレーニング期間中も自信や帰属意識に影響を与え続ける人もいた。しかし、コミュニティの文化的豊かさや反貧困の視点が示唆するように、新参者は多様な背景に関連する利益を経験し、医療への帰属意識を見出すのに役立ったことも確かであった。

結論:新参者の地位は、あらゆる背景を持つ学生にとってアウトサイダーの中心的な原因であり、おそらく大学学部での第一世代への注目と同様に、関係者がもっと注意を払うべきものであることが証明された。また、ネットワークやコミュニティ形成の機会を提供する教育機関は、新参者を支援するうえで最も適した立場にあることが示唆された。