医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

'First in family' experiences in a Canadian medical school: A critically reflexive study (Med Educ 2023)

Wright SR, Boyd VA, Okafor I, Sharma M, Giroux R, Richardson L, Brosnan C. 'First in family' experiences in a Canadian medical school: A critically reflexive study. Med Educ. 2023 May 24. Epub ahead of print.

背景:カナダのメディカルスクールでは、多様性を改善するための取り組みが広く行われているにもかかわらず、裕福で高学歴な背景を持つ医学生が依然として圧倒的に多い。家族で初めて大学に入学した学生(students who are first in their family; FiF)の医学部での経験については、ほとんど知られていない。本研究では、ブルデューと批評的反射的レンズを用いて、カナダのメディカルスクールにおけるFiF学生の経験を調査し、メディカルスクールという環境がどのような形で不特定多数の学生にとって排他的で不公平なものになりうるかをより理解する。

方法:我々は、大学に通うためにFiFであることを自認する17人の医学生にインタビューした。また、理論的サンプリングを利用し、我々の新たな理論的枠組みを検証するために、医療家族の出身であることを自認する5人の学生にもインタビューを行った。参加者は、「家族のなかで最初の医学生」ということが自分にとって何を意味するのか、メディカルスクール入学までの道のり、メディカルスクールでの経験について議論するよう求められた。ブルデューの理論や概念は、データを探索するための感化的な概念として使用された。

結果:FiFの学生は、メディカルスクールで誰が属するかについて受け取った暗黙のメッセージ、メディカルスクール入学前の生活から医学者としてのアイデンティティに移行する際の課題、レジデンシープログラムで同級生と競争することについて話し合った。また、社会的背景が「典型的」でないため、同級生より優位に立つことができると認識していることについても考察した。

結論:メディカルスクールは多様性を高めるために前進を続けているが、包摂性と公平性にはさらに注意が必要である。我々の発見は、入試やそれ以降の構造的・文化的な変化の必要性を強調するものであり、FiFの学生を含む不特定多数の医学生が医学教育や医療にもたらす必要な存在や視点を認識する変化である。批判的反省を行うことは、メディカルスクールが公平性、多様性、包摂の問題に対処し続けるための重要な方法である。