医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

An act of performance: Exploring residents' decision-making processes to seek help (Med Educ 2021)

Jansen I, Stalmeijer RE, Silkens MEWM, Lombarts KMJMH. An act of performance: Exploring residents' decision-making processes to seek help. Med Educ. 2021 Feb 4. Epub ahead of print.

背景:residentは、患者の最善の利益のために行動する自信や能力が十分でないと感じたときには、助けを求めることが期待されている。既存の研究ではresidentの助けを求める意思決定においては指導医とresidentとの関係に焦点が当てられていたが、一方、職場環境、より具体的には他の医療チームのメンバーがこれらの意思決定にどのような影響を与えているのかについては、注目されてこなかった。本研究は、社会文化的なレンズを用いて、residentの助けを求める意思決定プロセスが、職場環境によってどのように形成されているのかを探索することを、目的とした。

方法:我々は構成主義的グラウンデッド・セオリー方法論を用いて、purposivelyに、およびtheoreticallyに、アムステル大学医療センターの18人のresident (9名のjunior=卒後1/2, 9名のsenioir=卒後5/6)をサンプリングした。半構造化インタビューを行い、residentが患者ケアの提供の間に助けを求める意思決定プロセスを探索した。データ収集と分析は反復的 (iterative)に行われ、constant comparative analysisを用いてテーマが特定された。

結果:residentは、助けを求める意思決定プロセスを「パフォーマンスの行為 (act of performance)」と表現した。すなわち、どのように助けを求めるのかということが、自らの評価に潜在的に影響を与えうることを考慮した。彼らはこのパフォーマンス行為を、安全で室の高い患者ケアを提供するための譲れない優先順位を核とした内部的な「バランスをとる行為 (balancing-act)」の産物であると、表現した。このことを念頭に置いて、residentは、助けを求めることを決定する際に、自立して働ける能力を示すこと、信頼性を維持すること、医療チームの一員として受け入れられることを考慮した。この「バランスをとる行為」は、学習環境の社会文化的特徴、residentと指導医との関係、他の衣料チームメンバーの知覚された親しみやすさに影響された。

結論:本研究は、社会文化的な力が、residentが助けを求めることをパフォーマンスの行為として経験することに影響を与えていることを示唆している。特に、指導医との建設的な関係や、他の医療チームメンバーの親しみやすさに起因する安全な学習環境は、助けを求める障壁を低下させた。指導医は、いつ助けを求めるべきかについて、residentと定期的に会話をすることで、これらの障壁に対処しうるだろう。