医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Understanding Moral Empathy: A Verbatim-Theatre Supported Phenomenological Exploration of the Empathy Imperative (Med Educ 2021)

Pieris D, Jafine H, Neilson S, Amster E, Zazulak J, Lam C, Grierson L. Understanding Moral Empathy: A Verbatim-Theatre Supported Phenomenological Exploration of the Empathy Imperative. Med Educ. 2021 Oct 6. Epub ahead of print.

背景:いくつかの研究では、医学研修中の共感性の低下が測定されており、公式、非公式、および隠れたカリキュラム内の要因がこの現象の原因であると推測されている。医学教育の文献では、共感の道徳的領域 (moral domain)が共感的反応の最も基本的なものであるとされているが、共感性の低下に関する研究のほとんどは、認知 (cognitive)、感情 (affective)、行動 (behavioural)の各領域を調べている。本研究では、訓練によって道徳的共感がどのように影響されるかに焦点を当てた点が特徴である。

方法:マクマスター大学の中核的な教育専門家である10名のレジデントが、研修経験に関するlightly structured interviewsに参加した。インタビューの記録は、記述的現象学的アプローチ (descriptive phenomenological approach)によって分析された。分析の結果、医療研修が道徳的共感に与える影響についての記述が得られた。これらの記述をもとに、レジデント、教育者、学習者、研究者、学者などの観客に向けて、逐語的な演劇を上演 (verbatim theatre play)しました。劇の後、参加者はアンケートに答え、記述内容を確認するとともに、道徳的共感性に影響を与えるレジデントのトレーニングにおけるその他の経験を把握した。アンケートの結果をもとにコードブックを修正し、その後、インタビューの記録を再分析した。その結果、研修が学習者の道徳的共感性に与える影響について、最終的に改良されたバージョンが完成した。

結果:今回の調査結果から、レジデントの道徳的共感の感覚は、生来の共感能力 (innate capacity for empathy)という概念に依存しており、臨床や教室での教育、研修中の患者との具体的な経験に影響されることが示唆された。重要なことは、これらの要因がレジデントの道徳的共感に直接的な悪影響を与えることはほとんどなく、むしろ道徳的共感に基づいて行動する能力に対する課題として経験されていることである。

結論:本研究は、道徳的領域での共感を経験することが何を意味するかについての考察を促すものである。この記述は、これまで報告されてきた共感性の低下を見るための新たな視点を提供すると同時に、コンピテンシーベースの評価や医学教育における共感性の概念化の方法に影響を与える道徳的-行動的な緊張関係を強調している。