医学教育研究者・総合診療医のブログ

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Dealing with uncertainty in clinical reasoning: a threshold model and the roles of experience and task framing (Med Educ 2021)

Stojan JN, Daniel M, Hartley S, Gruppen LD. Dealing with uncertainty in clinical reasoning: a threshold model and the roles of experience and task framing. Med Educ. 2021 Oct 5. Epub ahead of print.

背景:不確実性 (uncertainty)は、臨床実践や臨床推論に欠かせないものだが、研究やモデル化が難しいことがわかっている。臨床家がどのように不確実性を管理しているかについては、ほとんど知られていない。エビデンスに基づく医療理論によると、臨床家は、さらなる情報収集や治療のための行動閾値に達するまで、新しい情報を活用して不確実性を低減する必要がある。本研究では、経験とタスクフレーミングが不確実性の閾値に与える影響と、これらの閾値が臨床的意思決定の指針となる程度を検討した。最後に、被験者に閾値の回答を範囲で示すか具体的な数値で示すかによって、フレーミングの影響を調べた。

方法:医学部4年生108名、レジデント93名、教員72名に、細菌感染合併が疑われるウイルス性肺炎の症例を提示した。参加者は、検査と治療の閾値を、さらに検査をせざるを得ないような、具体的な数値か閾値間の確率の範囲のいずれかで特定した。その後参加者は、患者が重層的な感染症にかかっている確率が20%であることを伝えられ、患者を抗菌薬で治療するか、追加の検査を依頼するか、どちらもしないかを尋ねられた。意思決定の一貫性を評価するために、回答を事前に設定した閾値と比較した。

結果:学生、レジデント、教員は各々、検査の閾値は15.8%、20.6%、25.8%、治療の閾値は78.5%、71.6%、73.4%、閾値スパン(検査と治療の閾値の差)は学生、研修医、教員それぞれ62.7、51、47.6であった。回答者の64%が自分の閾値と一致した判断をし、28%がエスカレートした判断(閾値の予測以上のことをした)、7.6%がデエスカレートした判断(閾値の予測以下のことをした)をした。フレーミングは、教員とレジデントの両方の意思決定に影響を与え、学生にはより大きな影響を与えた。

結論:これらの知見は、臨床推論と閾値決定が臨床経験によってどのように変化するかを理解するのに役立つ。不確実性は不必要な検査や認知的不快感につながる可能性があるため、判断の閾値を調べることは、診断や治療の意思決定がどのように行われるかを確認するのに役立つ。