医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Residents as Supervisors: How Senior Residents Make Ad Hoc Entrustment Decisions (Med Educ 2023)

Nelson K, McQuillan S, Gingerich A, Regehr G. Residents as Supervisors: How Senior Residents Make Ad Hoc Entrustment Decisions. Med Educ. 2023 Jan 6. Epub ahead of print.

背景:レジデンシー・プログラムがコンピテンシー・ベースの医学教育に移行するなか、臨床現場においてアテンディングがどのようにその場限りの委託判断を行うかを理解するために、多くの研究が行われてきた。しかし、レジデントの意思決定や行動に対する最終的な責任はアテンディングにあるが、コンピテンシー・ベースの研修プログラムでは、上級レジデントが下級レジデントを直接指導することが多い。このような臨床的なダイナミズムは、その場しのぎの委託に関する文献ではほとんど見落とされてきた。本研究の目的は、上級レジデントが下級レジデントのためにその場限りの委託を決定する際に、どのような配慮をするのかを探ることであった。

方法:半構造化面接において、産婦人科の上級レジデント指導医11名(3年目、4年目、5年目)が、その場での臨床活動を後輩に託す方法について説明した。構成主義的グラウンデッド・セオリーの方法論に従い、理論的に十分であると判断されるまで、データを繰り返し収集し、常に比較しながらコード化した。

結果:上級レジデントは、患者の安全、学習環境の最適化、後輩の資質(見識やコミュニケーション能力など)、同僚からの学習者の引き継ぎ、状況的要因など、後輩への臨機応変な対応について、アテンディングと同様の考察を多く述べていた。ユニークだったのは、上級レジデントが中間管理職 (middle manager)としての役割と、下級レジデントを(バーンアウト、第二の犠牲者、アテンディングから)守りたいという思いが、その判断にどのような影響を及ぼすかを議論したことである。

結論:上級レジデントは、アテンディングと同様の考慮事項でその場しのぎの委託決定を行うが、それ以外の要因についても考えているようである。もし、これらの文書が、コンピテンシー委員会による高水準の総括的な委託判断に用いられるのであれば、臨時の委託判断の文書にこれらの考慮事項を盛り込む必要があるのかもしれない。