医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Personal career decisions during medical training are not complicated, they are complex (Med Educ 2024)

Harper LL, Desy J, Davis M, Weeks S, McLaughlin K. Personal career decisions during medical training are not complicated, they are complex. Med Educ. 2024 Jun 18. Epub ahead of print.

背景:医学研修が成功したとみなされるためには、適切な臨床判断を行うために必要なスキルを身につけることに加えて、研修生は適切な個人的判断を行う方法を学ばなければならない。このような意思決定は、キャリア選択の満足度、ワークライフバランス、長期にわたって臨床成績を維持・向上させる能力などに影響し、将来のウェルネスに影響を及ぼす可能性がある。ここでは、個人的な意思決定についての理解を深めることを目的として、意思決定の枠組みを紹介する。

方法:ビジネス界に由来するCynefinフレームワークは、clear, complicated, complex, chaotic, and confusionの5つの意思決定領域を記述しており、このフレームワークの重要な推論は、まず意思決定領域を特定することで意思決定を改善できるということである。個人的な意思決定は大部分がcomplexであるため、この領域では直線的な意思決定戦略を適用しても役に立ちそうにない。

結果:利用可能なデータは、個人の意思決定の結果が最適でないことを示唆しており、著者らはこれらの結果を説明する3つのメカニズムを提案している: (1) complexな意思決定は、無意識のうちに簡単な意思決定と交換してしまう属性代替の影響を受けやすい。(2) 予測は認知バイアスを受けやすい。例えば、自分の状況が一定であると思い込んだり(線形予測の誤り)、目標を達成すれば永続的な幸福が得られると考えたり(到達バイアス)、将来の課題の利益を過大評価しコストを過小評価したりする(計画の誤り); (3) complexな意思決定は、継続的でダイナミックな人と状況との相互作用の結果であるため、失敗する時間が長く、失敗する方法も多いため、complicatedな意思決定より本質的に失敗率が高い。

結論:個人の意思決定はcomplexであるという見解に基づき、著者らは、個人の意思決定に影響を与える可能性のあるバイアスに対する認識を高めるなど、個人の意思決定に対する満足度を向上させるための戦略を提案している。また、個人的な意思決定の結果は時間とともに変化する可能性があることを認識し、さまざまな形態のメンタリングなど、これらの意思決定を管理するための追加的な介入策も提案している。