医学教育研究者・総合診療医のブログ

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Mistreatment in paediatric residency programs in Thailand: a national survey (Med Educ Online 2023)

Tungsupreechameth A, Tanpowpong P, Puranitee P. Mistreatment in paediatric residency programs in Thailand: a national survey. Med Educ Online. 2023;28:2220176.

背景:学習環境における不当な扱い (mistreatment)は、レジデントにとって不利な結果となる。この点に関する研究の多くは、社会文化的背景や教育・研修制度が非西洋アジア諸国と異なる可能性のある西洋諸国において実施されている。本研究の目的は、(1)タイの小児科レジデントにおける不当な扱いの全国的な有病率、およびバーンアウトのリスクやその他の要因との相関を明らかにし、(2)我々の研修プログラムにおいて不当な扱い啓発プログラム(mistreatment awareness program; MAP)を開始することである。

方法:本研究は、2つのフェーズに分けられた。フェーズ1では、全国の小児科の現役レジデントを対象に、不当な扱いに関連する質問のオンラインアンケートを実施した。また、バーンアウトうつ病は、正式なスクリーニング質問により自己評価した。結果は、Negative Acts Questionnaire-Revisedにより、職場学習関連いじめ(workplace learning-related bullying; WLRB)、人関連いじめ(person-related bullying; PRB)、身体的威嚇いじめ、セクシャルハラスメントエスニックハラスメントの5領域の不当な扱いに分類された。頻繁な不当な扱い暴露は、不当な扱いが1回/週より多く発生した場合と定義された。第2段階であるMAPは、第1段階の結果を、いくつかの不当な扱いイベントの例や不当な扱い関連のビデオとともに配布することで実施した。3ヶ月後、当センターで、虐待を評価するためのアンケートを再送した。

結果:回答率は27%(n = 140)であった。その結果、91%が過去6ヶ月間に1回以上の不当な扱いを受けていることがわかった。ほとんどの不当な扱いの領域はWLRBとPRBが多く、レジデントは臨床教員や看護師から扇動されることが一般的であった。ほとんどの(84%)不当な扱いを受けたレジデントは、その出来事を報告しなかった。また、頻繁に不当な扱いこととバーンアウトとの間に関連が見られた(P < 0.001)。フェーズ2では、特にWLRBとPRBドメインでの虐待状況は、MAPの開始後に低下した。

結論:タイの小児科レジデントは、学習環境における不当な扱いを頻繁に認知している。WLRBやPRBといった不当な扱いの特定の側面については、慎重に調査し、特定の扇動者のグループを通じて管理する必要がある。