医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

The Use of Art Observation Interventions to Improve Medical Students' Diagnostic Skills: A Scoping Review (Perspect Med Educ 2023)

Mehta A, Agius S. The Use of Art Observation Interventions to Improve Medical Students' Diagnostic Skills: A Scoping Review. Perspect Med Educ. 2023;12:169-178.

背景:臨床観察スキルは、医療を実践するうえで基本的なものである。しかし、医学のカリキュラムのなかで、注意深く観察するスキルが教えられることはほとんどない。このことは、医療における診断ミスの一因となっている可能性がある。特に米国では、医学生の視覚リテラシーを高めるために、人文科学に着目し、ビジュアルアートに基づく介入を行うメディカルスクールが増加してきている。本研究では、アート観察トレーニングと医学生の診断能力との関係に関する文献をマッピングし、効果的な教育方法を明らかにすることを目的としている。

方法:Arksey and O'Malleyのフレームワークに基づき、包括的なscoping reviewを実施した。9つのデータベースを検索し、出版物およびgrey literatureを手作業で検索することにより、出版物を特定した。2名の査読者が、事前に設定した適格性基準を用いて、各出版物を独立に審査した。

結果:15件の出版物が含まれた。研究デザインとスキルアップを評価するために採用された方法には、著しい異質性が存在する。ほぼすべての研究(14/15)が、介入後の観察回数の増加を報告しているが、長期的な定着率を評価したものはなかった。プログラムには圧倒的に肯定的な反応があったが、観察結果の臨床的関連性を調査した研究は1件のみであった。

結論:レビューでは、介入後に観察眼が向上したことが立証されたが、診断能力の向上に関するエビデンスは非常に限られていることが明らかになった。コントロール群、ランダム化、標準化された評価ルーブリックの使用など、実験デザインにおける厳密性と一貫性を高める必要がある。また、最適な介入期間と得られたスキルの臨床への応用について、さらなる研究を行う必要がある。