医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Health Advocacy Among Medical Learners: Unpacking Contextual Barriers and Affordances (Med Educ 2022)

Kahlke R, Scott I, van der Goes T, Hubinette MM. Health Advocacy Among Medical Learners: Unpacking Contextual Barriers and Affordances. Med Educ. 2022 Dec 9. Epub ahead of print.

背景:カナダでは、学習者や医師がヘルスアドボカシーとして実践することが期待されているが、研修を修了した時点で、この重要な役割を実践する能力があると感じることはほとんどない。これは、アドボカシーが日常診療の「さらに上を行く (going above and beyond)」ものであり、変化に抵抗するシステムの境界を押し広げるものであると考えられていることが一因である。医学を学ぶ文脈には、アドボカシーについて学び実践するうえでの障壁が多く存在し、現在、文脈がアドボカシーにどのような影響を与えるかを理解することが求められている。

方法:構成主義的グラウンデッド・セオリー研究により、医療系学習者の個人面接とグループ面接を通じてデータを作成し、様々な学習・実践の文脈におけるアドボカシーの障壁と促進要因について検討した。多様な学習状況やアドボカシーについて異なる見解を持つ学習者を代表させるために、合目的的・理論的なサンプリングを行った。また、アドボカシーの意思決定を理解するために、初期コーディング、フォーカスコーディング、理論的コーディングを繰り返し、定比較分析を用いて理論モデルを構築した。

結果:学習者のヘルスアドボカシーに関する思考は、学習者独自の知識や信念、そして制度や組織の文脈によって組み立てられていた。これらの影響を念頭に置きながら、学習者は、患者、自分自身の社会的立場、利用可能な資源、社会的規範などの認識に関わるアドボカシーの余裕と障壁に導かれ、ローカルな意思決定状況においていつアドボカシーするかについて意思決定していた。

結論:この枠組みは、学習者がヘルスアドボケートについて学び、実践する能力に影響を与える文脈の重要な側面を強調するものである。この重要な仕事に対して学習者を適切に準備させるためには、この仕事を困難にしている学習と実践の状況の側面に対処する必要があり、一方で、学習者の努力を必ずしも支援しない状況に対処するために必要なツールを学習者に提供する必要がある。