医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Reconstructing the concept of empathy: an analysis of Japanese doctors' narratives of their experiences with illness (Adv Health Sci Educ Theory Pract 2022)

Morishita M, Iida J, Nishigori H. Reconstructing the concept of empathy: an analysis of Japanese doctors' narratives of their experiences with illness. Adv Health Sci Educ Theory Pract. 2022 Aug 11. Epub ahead of print.

背景:医師が患者に共感する能力は、人間性医学を確立する上で重要な関心事である。そのため、この能力の育成については、医学教育において盛んに議論されている。一説には、患者としての体験が医師の共感力を高めると言われている。この説は、医師の病いの語りを発表した先行研究からも支持されている。しかし、共感という概念は、医学を含む学術分野では曖昧に定義されているため、医師が患者との相互作用のなかでどのように「共感」を経験するかを分析することは困難である。我々の研究課題は、患者となった医師が、自身の闘病体験と闘病後の患者との相互作用の関係をどのように記述しているかである。

方法:このため、本論文では、まず、医学や他の学問分野における「共感」に関する議論を追跡し、医師の病気の語りを分析するためのレンズを開発する。次に、患者となった18人の日本人医師の闘病記のナラティブ分析を行う。

結果:その結果、病気によって医師がより共感的になれるという従来の考え方が支持された。しかし、これは単純すぎる。医師が病気を経験し、その後どのように処理するかは、より複雑である。また、このような考え方は、医師の苦しみを無視することになり、彼らの経験に基づく「共感」の習得にかかる長い過程を表すことができない。したがって、今回の分析では、「共感」という概念を解体し、その現れ方が多様であることを示した。

結論:今後、医師の病気が変容していく過程で、「共感」がどのように培われていくのか、医師のコミュニティや実践に着目したさらなる研究が必要であろう。