医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Predictors of Medical Students' Compassion and Related Constructs: A Systematic Review (Teach Learn Med 2022)

Wang CXY, Pavlova A, Boggiss AL, O'Callaghan A, Consedine NS. Predictors of Medical Students' Compassion and Related Constructs: A Systematic Review. Teach Learn Med. 2022 Aug 5:1-12. Epub ahead of print.

背景:思いやり (compassion)と、それに関連する共感などの構成要素は、医療における中核的な価値であり、患者とスタッフの双方にとって有益であることが知られている。しかし、思いやりと思いやりに関連する構成要素に影響を与える要因に関する研究は、まだ散見されるにすぎない。このレビューは、医学生における思いやりとそれに関連する構成要素の予測因子について調査した研究を体系化し、統合することで、思いやりのある未来の医師の育成にプラスにもマイナスにも貢献する因子についてより深く理解することを可能にするものである。

方法:データベース開設から2020年4月までの研究を対象とした12のデータベースのシステマティックレビューを実施した。査読のない文献や、サンプルの50%以上が非医学生である研究は除外した。介入研究もこのレビューの対象外であった。標準化されたツールを用いて、バイアスのリスクと知見の信頼性を評価した。データは、思いやりが個人的(学生)、環境、患者・家族、臨床的要因に影響されるという枠組みであるTransactional Model of Physician Compassionの中で分類された。

結果:検索された14,060件の論文のうち、222件の研究が含まれた。このうち、95%が学生要因を研究していたが、環境要因については25%、患者要因については9%、臨床要因については6%しか研究されていなかった。より大きな思いやりの予測因子としては、成熟度、仕事と人生経験、経験への開放性と同意性という性格特性、視点の取り方、内省、マインドフルネスなどのスキル、肯定的ロールモデルが挙げられた。逆に、否定的な態度・感情、バーンアウト、ストレス、detachment、人間的ケアよりも知識や効率を優先する文化での活動、否定的なロールモデル、時間的制約、重い仕事量は、思いやりの低下を予測させた。患者に関する要因としては、「気難しい」「非協力的な」患者や、自分の病気の責任があると認識されている患者などがあった。全体として、60%の研究でバイアスの重大なリスク、特に交絡と参加者選択のバイアスがあった。

結論:医学生の思いやりは、学生、研修環境、患者、臨床状況に関連する様々な要因によって予測される。しかし、既存の研究では、学生の要因(例えば、社会人口学的特性や気質的特性)に主に焦点が当てられており、その多くは介入することが不可能である。視野の確保、内省、マインドフルネスなどのスキルは、より高い思いやりと関連しており、介入の機会を提供する可能性がある。また、環境要因が生徒の思いやりを形成しているという強い証拠もある。研究者と教育者は、患者および臨床的要因が学生の思いやりに及ぼす影響について引き続き調査する必要がある。研究は、依然としてバイアスの高いリスクにさらされている。