医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

The Impact of COVID-19 on Physician-Scientist Trainees and Faculty in the United States: A National Survey (Acad Med 2022)

Kwan JM, Noch E, Qiu Y, Toubat O, Christophers B, Azzopardi S, Gilmer G, Wiedmeier JE, Daye D. The Impact of COVID-19 on Physician-Scientist Trainees and Faculty in the United States: A National Survey. Acad Med. 2022 Aug 2. Epub ahead of print.

背景:医師科学者 (physician-scientists)は長い間、絶滅危惧種と考えられており、その長期にわたる研修経路は崩壊の危機に瀕している。本研究では、COVID-19に関連する課題が、医師科学者の研修生と教員の私生活、キャリア活動、ストレスレベル、研究生産性に及ぼす影響について調査した。

方法:著者らは、2020年4月~6月にMD-PhDプログラムを有する米国120機関に配布したツールを用いて、医学生(MS)、大学院生(GS)、レジデント/フェロー(R/F)、教員(F)を対象に調査を実施した。グループ間の差の比較には、カイ二乗検定とフィッシャーの正確検定を用いた。ストレスと生産性低下に関連する因子を特定することを目的とした多変量ロジスティック回帰分析のための変数の選択には機械学習を採用した。

結果:1,929名の回答者(MS:n=679, 35%; GS:n=676, 35%; R/F:n=274, 14%; F:n=300, 16%)を対象とした分析が行われた。すべてのコーホートで、社会的孤立、パンデミックの影響によるストレス、生産性への悪影響が高いことが報告された。COVID-19の影響による経済的困難を報告した回答者は、MSやGSの回答者よりも、R/FやFの回答者の方が多かった。二重学位を持っているR/FおよびF回答者は、二重学位を持っていない回答者と比較して、より生産性が損なわれていることを表明した。多変量回帰分析では、MSとGSの両コホートにおいて、研究/学術活動への影響、経済的困難、社会的孤立が、ストレスおよび生産性低下の予測因子であることが確認され、生産性を残っていた。R/FとFの両コホートにおいて、私生活への影響と研究生産性がストレスと関連し、二重学位の地位、研究・学術活動への影響、私生活への影響が生産性低下の予測因子であった。また、男性よりも女性の方が、家庭での負担が増えたと回答した。

結論:COVID-19パンデミックに関連したストレスと生産性の低下が高いことが、医師科学者研修生と教員を対象としたこの全国調査で明らかになった。直面した課題とその結果を理解することは、パンデミック後の医師科学者を支援する取り組みを改善する可能性がある。