Betinol E, Murphy S, Regehr G. Exploring the development of adaptive expertise through the lens of threshold concepts. Med Educ. 2022 Aug 2. Epub ahead of print.
背景:専門的な臨床実践には問題解決への柔軟なアプローチが必要であるが、医療事務員は専門性への鍵として知識の習得に焦点を当てる傾向があることがエビデンスによって示されている。しかし、研修トレーニングを受けるまでは、専門性についての理解は、臨床問題に対する適応的なアプローチを開発する方向にシフトすることはない。このことから、適応型専門知識は閾値概念 (threshold concept)であり、適応型専門知識への転換を可能にする限界状態を作り出すには、複雑な問題解決を伴う本物の臨床経験が必要である可能性がある。この可能性を念頭に置き、本研究では、閾値概念の枠組みを感応レンズとして用い、新卒理学療法士が持つ専門性の概念化を検討した。
方法:構成主義的グラウンデッド・セオリーの伝統に基づく探索的質的研究を実施し、14名の新卒理学療法士との1対1の半構造化面接を利用した。
結果:参加者のほとんどは、専門性の概念化に関して過渡的な状態にあり、専門性の特徴として知識の習得と実践のルーチン化に焦点を当てることもあれば、患者ケアに対してよりダイナミックで適応的な問題解決アプローチを開発する必要性を認める場合もあった。このような様々な反応は、患者管理の枠組みだけでなく、同僚を大切にする理由や継続的な専門能力開発へのアプローチにも表れていた。特に、多くの参加者が、インタビューそのものが、これらの問題について考える重要なきっかけとなったことを示唆していた。
結論:本研究で得られた知見は、参加者が実務に携わるようになってから、適応的専門性の考え方に移行しはじめたことを示唆しており、本物の実務が日常的専門性の限界を認識する重要な原動力となる可能性を強めている。しかし、参加者の自発的なコメントから、この移行は、患者や同僚との有意義な臨床的かかわりに加えて、積極的なガイド付きリフレクションによって、よりよくサポートされる可能性があることが示唆された。