医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

How Does Multisource Feedback Influence Residency Training? A Case Study (Med Educ 2022)

Hennel EK, Trachsel A, Subotic U, Lörwald AC, Harendza S, Huwendiek S. How Does Multisource Feedback Influence Residency Training? A Case Study. Med Educ. 2022 Mar 8. Epub ahead of print.

背景:マルチソースフィードバック(MSF)は、360度評価とも呼ばれ、卒後研修で用いられる評価形態の一つである。しかし、その価値については、MSFの影響を与える要因やMSFの主な影響について十分に理解されていないため、議論が続いている。本研究では、MSFが研修トレーニングに与える影響因子とその影響の両方を調査した。

方法:大学病院の小児科医・小児外科医のレジデント研修の枠内で、質的事例研究を行った。MSFの関係者(レジデント、評価者、指導医)を対象とした7回のフォーカスグループインタビューからデータを収集した。reflexive thematic analysisを行うことで、MSFの影響因子とその影響を抽出した。

結果:7つの影響要因を見出した。1. MSFの明確な目標の発表、2. MSFの評価方法に関する評価者のトレーニング、3. 縦断的な観察のアプローチ、4. ローテーション中の早すぎず遅すぎないタイミング、5. 評価の一部としてのナラティブコメント、6. レジデントの自己評価、7. 同じ科の指導医によって、MSFは促進されることがわかった。
一方MSFの与える影響について、3つのテーマが未唯愛された。1. MSFはレジデントの専門的な能力開発を支援する、2. 多職種間チームワークを強化する、3. 評価者のレジデント育成へのコミットメントを高める。

結論:本研究は、MSF が研修トレーニングに及ぼす影響因子と影響を明らかにするものである。また、観察の継続性、ローテーション中のタイミング、指導医の役割について、新たな提言を行う。さらに、本研究は、アイデンティティ形成理論のレンズを通して結果を議論することにより、MSFの概念的理解を深めることができた。我々は、レジデント・トレーニングにおけるMSFの可能性を活用するために、MSFに関する今後の研究の枠組みとして、アイデンティティ形成理論を提案する。