医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Final-year medical students' self-assessment of facets of competence for beginning residents (BMC Med Educ 2022)

Bußenius L, Harendza S, van den Bussche H, Selch S. Final-year medical students' self-assessment of facets of competence for beginning residents. BMC Med Educ. 2022;22:82.

背景:医学生最終学年は、レジデント研修開始にあたって十分準備できていないと感じることが多い。研修生が自らの学習に責任を持つためには、コンピテンシーを自己評価することが重要である。本研究では、医学生最終学年が卒後研修への移行を間近に控え、自分のコンピテンシーをどのように自己評価しているかを調査した。その目的は、卒前研修における改善点を明らかにすることである。

方法:2019/2020年度に、医学生最終学年生を対象に、各メディカルスクールを通じて全国規模のオンライン調査を行った。調査内容は、レジデントに最も関連する10のfacets of competence(FOC)であった。参加者は各FOCについて、5段階のリッカート尺度(1:強く反対〜5:強く賛成)でコンピテンシーを自己評価するよう求められた。自己評価したFOCの能力の順序を平均値で定め、対応のあるt検定で解析した。男女差は独立t検定で評価した。

結果:35校のメディカルスクールから合計1083名の学生がアンケートに回答した。平均年齢は27.2±3.1歳で、65.8%が女性であった。学生の評価は、「チームワークと仲間意識」「共感と開放性」が最も高く(それぞれ97.1%と95.0%が「強くそう思う」「そう思う」)、「同僚や上司との口頭コミュニケーション」「科学的・経験的根拠に基づく働き方」が低かった(それぞれ22.8%と40.2%が「強くそう思わない」「そう思わない」「どちらとも言えない」)。「チームワークと協調性」「共感と開放性」「自己の限界と可能性を知り維持する」については、女性の方が男性よりも有意に高い評価を得ていた(Cohenのd > .2)。一方、「科学的・経験的根拠に基づく働き方」については、男性の方が女性よりも高い自己評価を得ていた(Cohenのd = 0.38)。FOCの「責任」「自己の限界と可能性を知り維持する」「構造、作業計画、優先順位」「ミスへの対処」「科学的・経験的根拠に基づく働き方」は、医師がresidentのために設定したFOC関連性の順序よりも自己評価成績が低いことが明らかにされた。

結論:学生の自己評価によるFOCのレベルと医師によるFOC関連度のランキングの違いから、ヘルスシステム科学に関する卒前医学教育の改善すべき点が明らかになった。最終学年の学生は、マネジメントスキル、プロフェッショナリズム、エビデンスに基づく医療に関する追加的あるいはより良いトレーニングから利益を得ることができるかもしれない。自己評価によるコンピテンシーの調査は、卒前教育におけるコンピテンシーの発達をモニターするために有用であると考えられる。