医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Visual art-based training in undergraduate medical education: A systematic review (Med Teach 2021)

Alkhaifi M, Clayton A, Kangasjarvi E, Kishibe T, Simpson JS. Visual art-based training in undergraduate medical education: A systematic review. Med Teach. 2021 Nov 22:1-10. Epub ahead of print.

背景:ビジュアルアート (visual art)は、医学教育への導入が進んでおり、共感などの重要なコンピテンシーを高めることが示されている。しかし、効果的なビジュアル・アート・プログラムのデザインや評価プロセスに関するevidenceは限られている。このシステマティックレビューでは、卒前医学教育におけるビジュアルアートを用いたトレーニングプログラムの形式、内容、および推奨される成果について検討する。

方法:MEDLINE, EMBASE, Cochrane Central Register of Controlled Trials, ProQuestERICで卒前医学教育とビジュアルアートに関する包括的な文献検索を行い、2014年から2020年に発表された1703件の論文を検索した。インクルージョン・エクスクルージョン基準を確認した後、23の論文を選び、フルレビューと統合を行った。

結果:プログラムの形式と内容は様々で、1日の特定のコンピテンシーに焦点を当てたプログラムから、しっかりと構成された6~12週間の包括的なプログラムまで多岐にわたっていた。プログラムの焦点は、観察力、共感、不確実性への耐性 (tolerance to uncertainty)、文化的感受性、チームビルディングとコラボレーション、ウェルネスレジリエンスの6分野であった。いくつかのプログラムでは、スキルの習得を評価するために有効な手段を用いていたが、長期的な成果を扱うものはほとんどなかった。

結論:今回の知見から、ビジュアルアートを用いた教育は、医学教育における重要なコンピテンシー、特に共感を高めることが期待できることがわかった。特に臨床観察 (clinical observation)は、他のコンピテンシーと比較して、その有効性を示す最も強いevidenceがあった。今後、ビジュアルアートを取り入れたプログラムを実施する際には、コア・コンピテンシーの開発のためのより強固な基盤を提供するために、ガイド付きのアート作品、リフレクションエクササイズ、グループディスカッションなどを取り入れた長期的なプログラム(6週間以上)を実施することが望ましい。今後の研究では、有効な尺度を用いて成果を測定し、カークパトリック・レベル3および4の成果をよりよく評価するために参加者を追跡調査することを提案する。