医学教育研究者・総合診療医のブログ

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Anxiety is associated with extraneous cognitive load during teaching using high-fidelity clinical simulation (Med Educ Online 2021)

Fredericks S, ElSayed M, Hammad M, Abumiddain O, Istwani L, Rabeea A, Rashid-Doubell F, Bella AME. Anxiety is associated with extraneous cognitive load during teaching using high-fidelity clinical simulation. Med Educ Online. 2021;26:1994691.

背景:高臨場感のある臨床シミュレーションは、現在、確立された教育ツールである。しかし、重篤な状態にある患者を忠実に再現することは、学習者の感情を引き出し、認知的負荷 (cognitive load; CL)に影響を与える可能性がある。臨床シミュレーションを用いた教育は、感情的な過負荷と認知的な過負荷の両方を誘発する可能性がある。そこで、臨床シミュレーション時の不安とCLとの関係について検討した。

方法:男性19名、女性22名の計41名の医学生が参加した。臨床シミュレーション教育セッションにおいて、シナリオ前、シナリオ後、ディブリーフィング後の各時点で、State-Trait Anxiety Inventoryの状態不安 (state-anxiety)コンポーネントを配布した。また、シナリオ後にはCognitive Load Scale (Leppinkら)の質問票を記入した。これは、CLの3つの要素である内発的認知負荷 (intrinsic cognitive load; ICL)、外発的認知負荷 (extraneous cognitive load; ECL)、自己認識学習 (self-perceived learning; SPL)を評価するものである。ICL、ECL、SPLのCLスコアの中央値を、Mann-Whitney U検定を用いて、低不安状態の参加者と高不安状態の参加者のグループ間で比較した。

結果:状態不安スコアは、シナリオ前とシナリオ後の両方の時点で高かったが、ディブリーフィング後には有意に減少した。状態不安スコアの中央値(四分位範囲)は、シナリオ前、シナリオ後、デブリーフィング後のそれぞれにおいて、41.0(33.0~50.0)、46.0(33.0~52.0)、31.0(23.0~39.0)であった。状態不安の高い学生は、シナリオ後の時点で、状態不安の低い学生(中央値=0.9)よりもECLスコア(中央値=2.0)が高かった(U=220、p=0.043)。ICL、SPLのいずれにおいても、不安感との統計的な関係は見られなかった。

結論:シナリオ終了直後の不安状態はECLと関連するが、ICLやSPLとは関連しない。