医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Understanding the impact of academic difficulties among medical students: a scoping review (Med Educ 2021)

Kirtchuk D, Wells G, Levett T, Castledine C, De Visser R. Understanding the impact of academic difficulties among medical students: a scoping review. Med Educ. 2021 Aug 27. doi: 10.1111/medu.14624. Epub ahead of print. PMID: 34449921.

背景:多くの医学生は、在学中に様々な学業上および個人的な課題に遭遇する可能性があるが、彼らの経験についてはほとんど知られていない。我々の目的は、今後の研究の参考にしたり、政策変更の参考にしたりするために、文献をレビューすることである。

方法:PubMed,MEDLINE,EMBASE,PsycInfo,British Education Index,Web of Science,ERICを対象に,英語で書かれた一次研究を日付制限なしで検索した。その結果、822件の論文が見つかり、そのうち8件がレビューに含めるための条件を満たしていた。データは、2人の研究者によって独立してレビューされ、研究チームによってテーマ分析が行われた。

結果:3つの主要なテーマが浮かび上がった。テーマ1:「アイデンティティの保持」では、学業上の困難に直面した際に自己の感覚を保つという学生の目的と、支援を求める傾向を取り上げた。このことは、多くの学生が表明した教育機関に対する不安を、テーマ2の「メディカルスクールの二重の役割」(メディカルスクールは、困難な学生を支援することが求められているが、主に、医学での成功したキャリアへのゲートキーパーとして機能する懲罰的な構造であると考えられている)へとつなげている。この複雑な状況のなかで、学生が不安を感じ、自分のアイデンティティを守ろうとする結果、「不適応な対処戦略」(テーマ3)がしばしば生まれた。

結論:医学生が直面する学業上の課題を彼ら自身の経験を通して理解し、探求することは、より個別化された再教育 (remediation)戦略の開発の必要性を強調するものである。教育者は、学生と教育機関の間のギャップを埋めるためにもっと努力する必要があるかもしれない。学生との信頼関係を構築し、評価や進級に力を注ぐよりもむしろ、学生の自己意識を高め、学習への取り組み方を修正することが必要である。