医学教育研究者・総合診療医のブログ

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Consultation length, process quality and diagnosis quality of primary care in rural China: A cross-sectional standardized patient study (Patient Educ Couns 2021)

Wang Q, Adhikari SP, Wu Y, Sunil TS, Mao Y, Ye R, Sun C, Shi Y, Zhou C, Sylvia S, Rozelle S, Zhou H. Consultation length, process quality and diagnosis quality of primary care in rural China: A cross-sectional standardized patient study. Patient Educ Couns. 2021 Aug 8:S0738-3991(21)00545-0. Epub ahead of print.

背景:患者がプライマリ・ケア施設から受ける医療の質を測定するうえで、患者と医療従事者の間で交わされる時間である診察時間は不可欠な要素である。しかし、診察時間とプライマリ・ケアのプロセスの質や診断の質との関連性はまだ不明である。本研究では、中国の農村部において、プライマリ・ケアの質の中心的な要素であるプロセスの質と診断の質を提供するうえで、診察時間が果たす役割を検討することを目的とした。

方法:本研究では、中国の3つの省にある医療施設で、狭心症結核の典型的な症状を呈する標準的な患者 (SP)を抜き打ちで募集した。SPの診察時間とプライマリ・ケアの質を測定し、国際標準および国内標準のケアと比較した。診察時間とプライマリ・ケアの質の関係を調べるために、プロセスの質 (連続従属変数)についてはOLS (Ordinary Least Squares)回帰を、診断の質 (二値従属変数)についてはロジスティック回帰を行った。

結果:狭心症の典型的な症状を持つ患者と結核の症状を持つ患者の平均診察時間は、それぞれ約4.33分と約6.28分であった。狭心症結核については、患者との面談時間が長いほど、問診・検査ともに推奨されるチェックリスト項目を高い割合で実施していた (β=1.39,95%CI 1.01-1.78)。さらに、患者と接する時間が長い医療者ほど、狭心症 (限界効果 = 0.014, 95%CI 0.002-0.026)と結核 (限界効果 = 0.013, 95%CI 0.005-0.021)について正しい診断を下す傾向があった。

結論:中国農村部のプライマリ・ケア提供者の平均診察時間は極めて短い。診察時間が長いほど、プライマリーケアのプロセスと診断の質が向上する。我々は、プライマリ・ケア提供者が患者とのコミュニケーションの長さを増やすことを推奨する。そのためには、政府が医療改革を実施し、医療サービスにおける手頃で信頼できる診察時間の要件を明確にする必要がある。さらに、このような経験は、他のdeveloping countryにも広げることができる。