医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

"In the Shadow of Shame": A Phenomenological Exploration of the Nature of Shame Experiences in Medical Students (Acad Med 2021)

Bynum WE 4th, Teunissen P, Varpio L. "In the Shadow of Shame": A Phenomenological Exploration of the Nature of Shame Experiences in Medical Students. Acad Med. 2021 Aug 3. doi: 10.1097/ACM.0000000000004261. Epub ahead of print. PMID: 34348391.

背景:恥 (shame)は、個人が否定的な結果に対して、欠陥のある自分を責めるときに生じる。医学教育における恥に焦点を当てた研究は、その多くが卒後医学教育に向けられており、メディカルスクールで起こる恥についてはあまり認識されていない。特に、医学生の恥のきっかけについては研究されているが、恥がどのように感じられるのか、恥が個人に何をさせたいと思わせるのか、恥がどのような影響をもたらすのかについては、ほとんど知られていない。そこで、本研究では次のように問いかける:「医学生の恥が誘発された後、それはどのように経験されるのか?」

方法:著者らは、医学生の生きた恥の経験の構造と意味を豊かに記述するために、解釈学的現象学 (hermeneutic phenomenology)を選択した。米国の私立メディカルスクールから16名の医学生を研究対象としてリクルートした。データは、1対1の半構造化インタビューを用いて収集され、AjjawiとHiggsの解釈学的分析の6つのステップに沿って分析された。

結果:データ分析の結果、参加者の恥の経験を構成する要素として、感情、身体的症状、認知プロセス、行動傾向、効果などが明らかになった。これらの構成要素間の関係を分析すると、恥のパターン(例:慢性的な恥、フラッシュバック)、自己評価プロセス(例:戦いの声、歪んだ参照枠)、恥の知覚される効果(例:孤立、心理的苦痛)など、特定の現象学的構造が得られた。データセット全体を通して、不安定化させる感情としての「恥」という包括的なテーマが浮かび上がった。

結論:恥は医学生にとって複雑な感情であり、その不安定化作用により、引きこもり、孤立、心理的苦痛、プロフェッショナル・アイデンティティ形成の変化、アイデンティティの不協和につながる可能性がある。著者らは、教育上のトラウマに対する反応として恥が生じている可能性を強調し、恥の不安定化の性質を概念化するためにドミノ倒しのメタファーを提示し、医学教育における個人や組織への影響を概説している。