医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Gender Bias in Resident Evaluations: Natural Language Processing and Competency Evaluation (Med Educ 2021)

Andrews J, Chartash D, Hay S. Gender Bias in Resident Evaluations: Natural Language Processing and Competency Evaluation. Med Educ. 2021 Jul 5. Epub ahead of print.

背景:これまでの研究では、女性レジデントは、医学研修中に性別を問わない行動をとった場合、評価上のペナルティを受けることがわかっている。医学教育の評価や成績のスコアに関する研究では、ジェンダーバイアスが反映されているが、研究の方法は様々で、結果も一貫していない。本研究で我々は、内科レジデントの評価書における言葉の使い方、コンピテンシーテーマ、長さの違いを、教員とレジデントの両方の性別の影響を考慮して検討することを目的とした。その結果、女性内科医は男性内科医に比べてより多くの否定的な評価を受け、異なるテーマの評価を受けているという仮説を立てた。

方法:本研究では、イェール大学医学部の内科レジデント内で6年間(2012年~2018年)にわたって行われたポジティブおよびネガティブな質問に対する3864件の個人回答のコーパスを利用した。研究者は、評価回答の価値観を評価するために、センチメントモデルを開発した。その後、自然言語処理 (natural language processing; NLP)を用いて、女性と男性のレジデントのどちらがよりポジティブまたはネガティブなフィードバックを受けているか、また、そのフィードバックが性別に応じて異なるACGME (Accreditation Council for Graduate Medical Education)コアコンピテンシーに焦点を当てているかを評価した。また、評価者と被評価者の性別が、フィードバックの量と質にどのような影響を与えるかを分析した。

結果:女性レジデントと男性レジデントでは、肯定的、否定的なコメントの数に実質的な違いはないことがわかった。特定のコンピテンシーが他のコンピテンシーよりも多く議論されていたが、性別はどのコンピテンシーが議論されるかには影響していないようであった。どちらの性別の研修生も書面によるフィードバックをより多く受けていなかったが、女性の評価者はより長い評価を書く傾向があった。

結論:結論として、規模を大きくして検討した場合、量的な性差は質的な研究で見られたほど顕著ではなかった。この知見を先行研究と整合させるためには、言語現象(文脈など)のさらなる調査が必要であることが示唆された。