医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

The fatigue paradox: Team perceptions of physician fatigue (Med Educ 2021)

Field E, Lingard L, Cherry R, VanKoughtnett JA, DeLuca S, Taylor T. The fatigue paradox: Team perceptions of physician fatigue. Med Educ. 2021 Jun 26. Epub ahead of print.

背景:レジデント教育における疲労リスク管理の実施を求める声が高まっているが、医師の疲労が職場の危険因子であるという共通の理解があることが前提となっている。しかし、医療チームのメンバー全員がこの前提を維持しているという実証的な証拠はない。そこで本研究では、医師の疲労の役割を医療従事者がどのように理解しているかを探り、研修や医療現場での疲労リスク管理の実施に役立てることを目的とする。

方法:本研究では、構成主義的なグラウンデッド・セオリー (Constructivist Grounded Theory)を用いて、職場の疲労に対する認識とその臨床への影響を探る。4つの病院の8つの専門分野の医師、看護師、シニアレジデントに個別の半構造化インタビューを行い、合計40名が参加した。恒常的な比較分析によりデータ分析を行い、最終的なグラウンデッド・セオリーを導き出した。

結果:参加者は、医師の疲労が臨床パフォーマンスに及ぼす複数の問題点を説明する一方で、疲労が患者のケアに及ぼす悪影響を認めようとしなかった。我々はこれらの矛盾を「疲労パラドックス」と呼んでいる。疲労パラドックスを支えているのは、疲れ知らずの医師 (indefatigable physician)、盲点 (blind spots)、セーフティネットへの信頼 (faith in safety nets)、疲労に関連するイベントの最小化 (the minimization of fatigue-related events)という4つの重要なテーマである。

結論:本研究では、医療チームのメンバーは、医師の疲労が患者のケアにとって問題であるということを、それに反する複数の例を提示しているにもかかわらず、普遍的に感じているわけではないことが示唆された。このような逆説的な疲労に対する理解は、システムが疲労した医師、特に研修生に依存しており、疲労を批判的に検討するメカニズムをほとんど提供していないことが原因であると考えられる。臨床指導者が職場での疲労潜在的な悪影響に懐疑的である場合には、レジデントトレーニングにおける疲労リスク管理を成功させることは難しいかもしれない。