医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

'Nurses whisper.' Identities in nurses' patient safety narratives of nurse-trainee doctors' interactions (Med Educ 2021)

Samuriwo R, Bullock A, Webb K, Monrouxe L. 'Nurses whisper.' Identities in nurses' patient safety narratives of nurse-trainee doctors' interactions. Med Educ. 2021 Jun 1. Epub ahead of print.

背景:看護師は患者の安全に不可欠な存在であるが、医学的キャリアを重ねるなかで、患者の安全性やコンピテンスに関する研修医との二者相互作用に関連して、看護師がどのようにアイデンティティを構築するかについてはほとんど知られていない。経験豊富な看護師が、研修医との患者安全性に関する対話の語りのなかで、アイデンティティがどのように構築されているかを検討する。

方法:今回の質的研究では、さまざまな分野の看護師 (n = 20)との半構造化インタビューを通じて、ナラティブデータを収集した。最初の8人の参加者の募集には、合目的的サンプリングが用いられ、残りの参加者は理論的なサンプリングによって募集された。録音された音声は、逐語的に文字起こしされ、社会的構築主義 (social constructinist)の枠組みを用いて帰納的に、またコンピテンスの枠組みを用いて演繹的に分析された。

結果:参加者が研修医との二者相互作用のなかで構築した、患者の安全性に関連する7つのアイデンティティを分類した。すなわち、教師としての看護師、患者のwell-beingの守護者、感情的なサポートの提供者、一般的なサポートの提供者、専門的な助言者、ナビゲーター、チームプレーヤーである。これらアイデンティティは、教育者としての看護師と実践者としての看護師という2つの重要な役割に関連している。参加者は、これら二者相互作用について語りながら、研修医をキャラクターとして位置づけ、専門的なコンピテンシーのギャップを示唆するようなアイデンティティを構築した。ギャップとはすなわち、一般的なサポートの提供者としての看護師は、個人的・機能的な能力の不足を認識する文脈で語られることが多く、チームプレーヤーとしての看護師は、主に倫理的な能力に関する懸念(または安心感)と関連していた。

結論:我々は、経験豊富な看護師が、患者の安全を確保し、医学的コンピテンシーの主要な考え方を実践のなかで学ぶため、研修医とのやりとりのなかで構築するアイデンティティに光を当てた。患者の安全性を確保し、研修医のプロフェッショナルとしての成長を支援する看護師の仕事は、公式に認められ、正当化されるべきものである。