医学教育研究者・総合診療医のブログ

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Lists of potential diagnoses that final-year medical students need to consider: a modified Delphi study (BMC Med Educ 2021)

Urushibara-Miyachi Y, Kikukawa M, Ikusaka M, Otaki J, Nishigori H. Lists of potential diagnoses that final-year medical students need to consider: a modified Delphi study. BMC Med Educ. 2021;21:234.

背景:対照学習 (contrastive learning)は、臨床推論における診断仮説の立て方を医学生に教えるのに効果的であることが知られている。しかし、卒前医学教育カリキュラムの一環として学ぶべき一般的な徴候や症状に関する、異なる医学分野間での診断的考察のリストに関する国際的なコンセンサスは得られていない。日本では、2016年に卒前医学教育の国家モデルコアカリキュラムが改訂され、37の一般的な徴候、症状、病態生理に対する診断候補リストがカリキュラムに導入された。本研究は、専門家のコンセンサスに基づくリストの検証を目的としたものである。

方法:著者らは、修正デルファイ法を用いて、日本全国から集まった臨床推論の専門家である医師・教師23名のパネルの間でコンセンサスを形成した。項目の評価は5段階のリッカート尺度で行い、最終学年の医学生が与えられた徴候や症状、病態生理を考慮して疾患を仮説するかどうかを基準とした。また、仮説を立てるべき他疾患を追加した。肯定的なコンセンサスは、パネルの同意率が75%であることと、5段階評価の平均値が4以上で標準偏差が1未満であることの両方であると定義した。研究は2017年9月から2018年3月にかけて実施した。

結果:この修正デルファイ調査では、日本の医学生が卒業までに習得すべき37個の一般的な徴候、症状、および病態生理に対する潜在的な診断に対応する、275個の基本項目と67個の基本以外の必須項目が特定された。

結論:本研究で作成されたリストは、学生の対照学習を促すことで、初期仮説の立て方を指導・学習する際に有用である。これらは日本の教育事情に焦点を当てたものであるが、リストと検証のプロセスは、医学教育カリキュラムの内容に関する国民的なコンセンサスを構築するために、他の国にも一般化できるものである。