医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Differences in clinical knowledge levels between residents in two post-graduate rotation programmes in Japan (BMC Med Educ 2021)

Muroya S, Ohde S, Takahashi O, Jacobs J, Fukui T. Differences in clinical knowledge levels between residents in two post-graduate rotation programmes in Japan. BMC Med Educ. 2021;21:226.

背景:日本では、2010年から2020年にかけて、卒後医学教育のカリキュラムとして、少なくとも7つの臨床科でのローテーションが必要な包括的ローテーションプログラム(CRP)と、より少ない臨床科でのローテーションが必要な限定的ローテーションプログラム(LRP)の2つが存在していた。日本の卒後研修を標準化するためにどのようなカリキュラムを採用すべきかは、長い間議論されてきた。複数の研究によると、CRPで研修を受けた卒後研修生は、LRPで研修を受けた卒後研修生に比べて、満足度や自信が高く、より多くの臨床経験を積むことができた。しかし、日本の卒後研修生の臨床知識を客観的に測定して比較した報告はない。本研究の目的は,Professional and Linguistic Assessment Board test(PLABテスト)の一項目を用いて,CRPとLRPの研修生の臨床知識を客観的に測定し,比較することである。

方法:2020年2月と3月に全国規模の横断調査を実施した。日本国内の一般病院から、医学部を卒業した卒後研修生を自主的に募集した。研修生の基本的な臨床知識を客観的に測定するために、英国のPLABテストを採用した。カットオフポイントは、英国General Medical Councilが推奨する63%に設定した。卒後プログラムの違いが研修生のテストスコアに影響しているかどうかを調べるために、統計分析を行った。

結果:募集後に22施設が参加を志願し、19施設から97名の研修生が研究に参加した。参加者のうち31名(32%)はCRP、66名(68%)はLRPに所属していた。多重ロジスティック回帰によると、CRPの研修生が高得点群に属することの調整オッズ比は5.16(95%CI:1.28-20.73、p<0.05)であった。小児科、精神科、神経科のスコアの平均差は、CRP研修生の方がLRP研修生よりも統計的に有意に高かった。

結論:CRPに所属していた卒後研修生は、基本的な臨床能力の知識(PLABテスト)のスコアが高く、より幅広いサブスペシャリティで試験を受けた際の成績も良かった。試験成績だけでなく、臨床成績や、卒後医療研修における研修生のコンピテンシーの経時的な推移についても、今後の研究で評価する必要がある。