医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Going against the grain: An exploration of agency in medical learning (Med Educ 2021)

Watling C, Ginsburg S, LaDonna K, Lingard L, Field E. Going against the grain: An exploration of agency in medical learning. Med Educ. 2021 Mar 29. Epub ahead of print.

背景:学習者中心の医学教育は、学習者の主体性 (learner agency)に依存している。原理的には魅力的だが、実際に主体性を行使するのは複雑なプロセスであり、社会的規範や文化的期待に制約される可能性がある。本研究では、医学における主体的学習者 (agentic learner)とは何か、また、学習者がどのように主体性を経験し、学習に利用しているのかを調査した。

方法:構成主義的なグラウンデッド・セオリーの手法を用いて、「学習の異端児 (learning mavericks))」と認識されている19名の医師または研修中の医師にインタビューを行った。この戦略により、自分自身を主体的な学習者であると強く認識している参加者を集めることができた。我々は、彼らが行った非典型的な学習の選択、遭遇した支援と抵抗、そしてどのようにして自分自身のために明確な道を切り開くことができたのかについて尋ねた。データの収集と分析は同時並行的 (concurrent)かつ反復的 (iterative)に行われ、恒常的な比較の手法 (constant comparative approach)に基づいて行われた。

結果:我々は、「主体性とは仕事である (agency is work)」という1つの包括的なコンセプトを確認した。主体性を行使するという仕事は、適合性を促進し、学習者個人の主体性に抵抗すると考えられている専門的なトレーニングのシステムによって、さらに複雑なものとなっていた。主体性を行使する個人の能力は、ソーシャル・キャピタル、自己認識、メンターシップによって強化されるようであった。

結論:我々の研究は、医学における学習者の主体性についての理解を拡大し精緻化するものであり、主体性の行使は、学習者に対して社会的・職業的な期待へ適合するという大きな圧力への抵抗を要求する、時には反文化的な行為であることを、強調するものである。システムの期待のなかで成功する能力を確立した強い学習者にとっては、主体性はより簡単に得られるかもしれない。したがって、学習者の主体性を高めるには、学習者のサポートに細心の注意を払う必要がある。学習者が適切な学習経路を特定するのを手助けし、社会的期待の圧力から保護するメンターシップは、特に効果的である。