医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Medical educators' beliefs about teaching, learning, and knowledge: development of a new framework (BMC Med Educ 2021)

Ottenhoff-de Jonge MW, van der Hoeven I, Gesundheit N, van der Rijst RM, Kramer AWM. Medical educators' beliefs about teaching, learning, and knowledge: development of a new framework. BMC Med Educ. 2021;21:176.

背景:医学教育者の教育的信念は、彼らの教育実践に影響を与える。これらの信念を洞察することは、メディカルスクールが学生に提供する教育の質を向上させ、ファカルティ・ディベロップメントをガイドするうえで重要である。高等教育の分野では、教育者の教育的信念を調査した研究がいくつかあり、その結果、多様な信念の構造的基盤となる分類がなされている。しかし、医学教育の分野では、ほとんど分類研究が行われていない。本研究では、教育・学習・知識に関する教員の信念を記述するフレームワークを医学教育の文脈に合わせて提案する。提案されたフレームワークでは、教育的信念が信念の方向性 (belief orientation)と信念の次元 (belief dimension)に2次元的に整理されたマトリックスが記述されている。信念の方向性は、教育中心から学習中心までの範囲であり、信念の次元は、「望ましい学習成果」や「学生のモチベーション」など、信念の質的に異なる側面を表している。

方法:本研究では、2つの著名なメディカルスクールの教員26名(全員が教育に深く関わっている)に対して、詳細な半構造化インタビューを行った。SamuelowiczとBainのオリジナルフレームワークを出発点として、文脈に合わせてアレンジした。質的分析は、インタビューの断片をSamuelowiczとBainのフレームワークに関連付けることで構成されているが、インタビュー中に発見された潜在的に新しい信念にも目を向けた。結果の質を確保するために、さまざまな戦略を採用した。

結果:我々は、新しい信念の次元を特定し、他の次元を医学教育の文脈に適用するために適応または改良した。オリジナルのSamuelowiczとBainのフレームワークで対応していた信念の方向性は、新しいフレームワークではより正確に記述されている。新しいフレームワークは、教育中心の信念の方向性と学習中心の信念の方向性の間の境界を明確にしている。

結論:我々の発見は、オリジナルのSamuelowiczとBainの信念のフレームワークの構造の妥当性を確認するものである。しかし、このフレームワークを医学教育の文脈に合わせるためには、様々な適応と改良が必要であった。改良された信念の次元と信念の方向性は、医学教育者の教育信念を包括的に記述することを可能にする。これらの改良により、この新しいフレームワークは、医学教育を改善するための現代的なツールとなり、医学教育者の能力開発に役立つ可能性がある。