医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Resilience and sense of coherence in first year medical students - a cross-sectional study (BMC Med Educ 2021)

Luibl L, Traversari J, Paulsen F, Scholz M, Burger P. Resilience and sense of coherence in first year medical students - a cross-sectional study. BMC Med Educ. 2021;21:142.

背景:幅広い研究から、医学生の精神状態が著しく悪化していることが多いことが明らかになっている。メディカルスクールに入学した医学部生は、母集団の平均値に匹敵する値で入学したにもかかわらず、わずか数学期後には、心理的リスク状態の割合が増加し、バーンアウトうつ病などの顕在化した精神疾患を示すことが明らかになっている。本調査では、精神的な健康状態のパラメーターを、意図的に健康生成論の観点から、すなわち資源を重視した観点から評価した。

方法:医学生1年生を対象とした横断的研究で、アントノフスキーのsalutogenesisモデルに基づくパラメータとしてのsense of coherence (SOC)とレジリエンスを、validateされた自己記入式質問紙を用いて、構造化された方法で評価した。合計で、フリードリヒ・アレキサンダー大学エアランゲン・ニュルンベルク校 (FAU)の人間医学、歯学、分子医学の学生236名を対象に調査した。

結果:分析の結果、女子学生に比べて男子学生の方がレジリエンスの値が有意に高かった(p < 0.01)。一方、レジリエンスとSOCの間には有意な相関が見られたものの、女子学生ではSOCの値が有意ではないが低くなっていた。参考サンプルと比較して、本研究の医学生の1年目の学生では、レジリエンス (p < 0.01)とSOC (p < 0.01)の値が有意に低くなっていた。

結論:レジリエンスとSOCは、心理的ストレス(バーンアウトの指標)やうつ病と相関があることが知られている。医学生のSOCやレジリエンスなどの防御因子を良好で健康的なレベルに維持するためには、この問題に積極的かつ教育的に取り組む必要があると考えられる。そのためには、医学生自身のメンタルヘルスの維持に焦点を当てた教育を、大学入学時から医学教育課程全体に組み込むことが不可欠であり、教育目標とすべきであると考える。また、本研究の結果を踏まえ、生物学的性別に依存した学生のニーズに対応するための方策を検討する必要があると考える。