Patel M, Aitken D, Xue Y, Sockalingam S, Simpson A. An evaluation of cascading mentorship as advocacy training in undergraduate medical education. BMC Med Educ. 2021;21:65.
背景:医師は、健康の公平性を主張するうえで大きな影響力をもつ立場にある。そのため、研修期間中の医師で、この役割を果たすために必要な知識と技術を身につけることが重要である。様々な卒前教育プログラムがヘルスアドボカシー研修を実施してきたが、経験学習や医師の関与が不足していることが多いのが現状である。このような点が、アドボカシー研修の新しいアプローチとしてカスケード・メンターシップを利用したAdvocacy Mentorship Initiative (AMI)の基礎となっている。医学生は、リスクのある環境で育った青少年のピアメンターとしてアドボカシー能力を身につけ、一方で、自身も、residentから指導を受けている。本研究では、卒前医学教育におけるアドボカシー能力の達成を促進するために、カスケード・メンターシップを利用することに具体的な利点があるかどうかを明らかにすることを目的としている。
方法:2017年から2020年の間にAMIに参加した医学生を対象に、参加前後の質問紙に回答してもらった。質問紙では、アドボカシー関連のスキル、青少年のアドボカシー概念に関する知識の他、学習目標、得られたスキル、AMIとresidentメンターの利点、将来のキャリアへの影響を評価した。定量的な結果の分析にはsign testを用いて、自由記述の回答には内容分析を用いた。トライアンギュレーションプロトコールも用いた。
結果:50名のメンターが参加し、そのうち24名 (48%)が事前・事後の両方の質問紙に回答した。参加者は、脆弱な人々との協力や医療・非医療ニーズのアドボカシーなど、アドボカシー関連のスキルに自信を得た (p < 0.05)。また参加者は、social determinants of healthや子どもの健康と発達に関連した概念についての理解が有意に改善した (p < 0.01)。内容分析の結果、参加者は、menteeとの有意義な関係を構築しており、social determinants of healthや青少年のアドボカシーについて学び、アドボカシーに関連した様々なスキルを身につけたことが明らかになった。参加者はresidentのメンターシップを高く評価し、リスクのある青少年との関わりやキャリアメンターシップについて、サポートやアドバイスといった利点を認識していた。AMIは、青少年との関わり、精神、アドボカシーへの関心という点で、参加者のキャリアの軌跡に影響を与えた。
結論:AMIは、医学生をリスクある青少年のメンター、およびresidentのメンティーとして参加させるカスケード・メンターシップを通じたアドボカシー研修の独特な方法を提供している。カスケード・メンターシップを通じて、医学生は、アドボカシー関連のスキルを身につけ、social determinants of healthについての理解を深めている。