医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Adapting Compassion Education Through Technology-Enhanced Learning: An Exploratory Study (Acad Med 2021)

Sukhera J, Poleksic J. Adapting Compassion Education Through Technology-Enhanced Learning: An Exploratory Study. Acad Med. 2021 Jan 12. doi: 10.1097/ACM.0000000000003915. Epub ahead of print. PMID: 33464741.

背景:思いやり (compassion)は医療の中心である.医療専門職を対象とした教育介入を通じて思いやり教育の取り組みは有望であるが,そのような教育はまだ普及していない.テクノロジーを活用した学習を通じた思いやり教育の適応は,思いやり教育の規模と普及を促進する機会を提供するかもしれない.しかし,そのようなカリキュラムをオンラインで配信するには,課題がある.本研究では,テクノロジーが,医療専門職を対象とした思いやり教育の配信にどのような影響を与えるのか,探索した.

方法:2019年3月から10月にかけて,カナダのオンタリオ中の13人の参加者を対象に,構成主義的グラウンデッド・セオリー法を用いて,半構造化インタビューを行った.参加者は,医療専門職を対象とした思いやり教育のデザインと評価の経験のある人を集めた.インタビューはコード化し帰納的に解析され,たえまない比較分析を行い,関連するテーマを同定した.本研究は,カナダのオンタリオ州ロンドンにある,Schulich School of Medicine & Dentistry, Western Universityで行われた.

結果:参加者は,テクノロジーと思いやり教育に関して様々な反応をした.参加者はテクノロジーが人間関係に及ぼす成約についての懸念を明らかにする一方で,テクノロジーは将来の思いやりのあるケアのカリキュラムを提供するうえで避けて通れない,必要なものであるとも述べた.参加者はまた,テクノロジーが医療専門職のための思いやり教育を強化する方法として,アクセスのしやすさと学習者の脆弱性に対する快適さを高める方法を共有した.将来的に思いやり教育をより発展させる要素として,テクノロジー的なアンビヴァレンスへの対応,ファシリテーションの改善,対面での指導とテクノロジー強化型学習 (technology-enhanced learning)のバランスの維持が挙げられた.

結論:思いやり教育はテクノロジーによって強化されうる.しかしながら,evidenceに基づいた適応には,テクノロジーが人と人とのつながりを侵食しないように,ある程度のレベルの対面式の相互作用を維持する意図的な努力が必要となるかもしれない.参加者が明らかにしたテクノロジーと思いやり今日言うを取り巻く不確実性に対処するためには,さらなる研究が必要である.本研究の知見は,思いやりのあるケアのカリキュラムをデジタル領域に適応させるためのガイダンスを,教育者に提供するものである.