医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Collaborative knotworking - transforming clinical teaching practice through faculty development (BMC Med Educ 2020)

Elmberger A, Björck E, Nieminen J, Liljedahl M, Bolander Laksov K. Collaborative knotworking - transforming clinical teaching practice through faculty development. BMC Med Educ. 2020;20:497.

背景:Faculty development (FD)は,医療専門職教育における教育実践を進めるために,重要である.しかし,FDの結果がどのように達成されるのか,実践面においてどのような変化が起きるのかについては,ほとんど知られていない.本研究では,臨床教育家がどのようにして,FDプログラムで開発した教育イノベーションを,自分の臨床的職場に統合するのかについて,探索した.よって本研究では,臨床システムのなかで,FDに続く変化がどのように展開されていくのかについて,理解を深めようとしている.

方法:本研究はケーススタディデザインに感化された研究で,縦断的FDプログラムを,FD参加者が実践での変化にどのように取り組むのかについて研究する機会を与えるケースとして用いた.本研究では,活動理論とその活動システムの概念を適用し,14名のプログラム参加者を対象としたフォーカスグループインタビューをテーマ分析した.参加者は,2つの教育病院,5つの臨床部門,5つの異なる医療専門職を代表していた.

結果:本研究では,統合プロセスに関与した活動システムと,イノベーションが職場に導入されたときに生じた矛盾について,報告する.本研究では,FDの参加者と職場で指導する臨床医が,変化のための指令を交渉し,職場の反応に応じたイノベーションを再認識し,システム間の一時的な均衡として和解するという反復的プロセスを通じて,この矛盾を克服するために,どのように相互作用したかを,明らかにした.

結論:本研究では,FD後に職場でどのようにして教育的変化がもたらされているのかという複雑さを明らかにしている.本研究の知見およびノットワーキング(knotworking; 結び目づくり)という活動理論的概念に基づいて,我々は,これらの複雑な過程は,FD参加者と職場スタッフとの間で,FDのアウトプットと職場の実践の両方が変容していく共同的ノットワーキングとして理解される可能性があることを示唆している.