医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Temporal changes in emotional intelligence (EI) among medical undergraduates: a 5-year follow up study (BMC Med Educ 2020)

Ranasinghe P, Senadeera V, Gamage N, Weerarathna MF, Ponnamperuma G. Temporal changes in emotional intelligence (EI) among medical undergraduates: a 5-year follow up study. BMC Med Educ. 2020;20:496.

背景:感情知能 (EI)は,専門家および学術的成功において重要な役割を果たすと考えられている.EIは,医療者が,臨床的・学術的状況における高いストレスのある環境に対応するのに,大切である.本研究は,前向きのフォローアップ研究で,医学生の5年間におけるEIの変化とその相関の評価を試みた.

方法:データは,スリランカコロンボ大学医学部において,2015年と2020年に採取した.EIは,妥当性の確認された33項目の自己評価ツールである,Schutte Self-Report Emotional Intelligence Test (SSEIT)を用いて評価された.さらに,社会統計的詳細,卒業前の生活における課外活動への関与,医学を勉強するという選択肢に関する医学生の満足,卒業後の学習についての計画についても,調査した.EIスコアの変化率を連続従属変数とし,他の独立変数(卒後の学習の計画,医学を選択したことの満足と,課外活動)とともに,全学生を対象に,重回帰分析を行った.

結果:サンプルサイズは170 (回答率 96.6%)で,41.2%が男性 (n = 70)だった.全学生におけるベースラインの平均EIスコアは122.7 +- 11.6で,フォローアップでは128.9 +- 11.2 (p < 0.001)と,有意に上昇していた.この有意な上昇は,男性,女性の両方において,独立して見られた.フォローアップの間,EIスコアの上昇は,全ての宗教・人種の学生で観察された.平均EIスコアは,いずれかの親の就労状況や高等教育の有無に関わらず,月収の全てのカテゴリーで上昇していた.フォローアップの間の平均EIスコアの上昇は,課外活動への参加や参加した回数に関わらず,学生に見られた.重回帰分析では,卒前プログラムの選択に関して満足していることが,EIスコアのパーセンテージの変化と唯一有意に関連している要因であった (OR 11.75, p = 0.001).

結論:今回のグループのEIは5年間のフォローアップで改善し,性別・宗教・国籍・社会経済的パラメーター・学術的パフォーマンスのいずれからも独立していた.選択した分野への満足度は,EIの総合的な変化への有意な推測要素であった.今後の研究では,卒前の医学生におけるEIの変化の原因となる要因を同定し,測定する必要があろう.

個人的所感:EIに注目した興味深い研究.また,5年後のフォローアップをしている…という点もこの研究のとても大事なポイントなのでしょう.そのぐらいの視野でリサーチしていきたいなぁと思いました.