医学教育研究者・総合診療医のブログ

医学教育、総合診療について気ままに綴ります。

Measuring impacts of continuing professional development (CPD): The development of the CPD impacts survey (CPDIS) (Med Teach 2021 )

Allen LM, Palermo C, Armstrong E, Hay M. Measuring impacts of continuing professional development (CPD): The development of the CPD impacts survey (CPDIS). Med Teach. 2021 Feb 26:1-23. Epub ahead of print.

背景:継続的専門職能開発 (continuing professional development; CPD)プログラムを評価することは、参加者とその教育機関にとっての価値を実証し、CPDプログラムの改善と質の向上につなげるために不可欠である。既存の調査は、狭い範囲の影響しか測定できていない。本研究では、知識、スキル、態度、自信といった簡単に測定できるものだけでなく、CPDプログラムの影響を幅広く測定できる調査を開発した。

方法:CPD影響度調査 (CPDIS)の開発は、ベストプラクティスのガイドラインに基づいて行われた。初期の調査項目の開発には、系統的なscoping review、質的インタビュー、および既存の調査手段が用いられた。2つの国際的な医療従事者教育機関からの過去の参加者が調査を完了した (n = 292)。主成分分析(PCA)を用いて調査項目を精緻化した。

結果:主成分分析の結果、3 つの要素からなる解が得られた。構成要素1(学習と自己効力感)、構成要素2(ネットワークとコミュニティの構築)、構成要素3(達成と検証)の3つの要素は、それぞれ47項目、14項目、13項目から構成されていた。3つの構成要素は高い内部整合性を有していた(それぞれα = 0.98、α = 0.95、α = 0.92)。

結論:CPDISは、CPDプログラムのより広範な影響を評価する最初の調査法である。CPDへの参加には多額の費用と機会費用がかかることを考えると、CPDISはCPDプログラムの有用性と価値をより効率的かつ正確に評価することを可能にするであろう。

個人的所感:CPDプログラムの効果判定ツールの開発リサーチ。いろいろと応用が効きそうなリサーチ方法です。

Contextual Competence: how residents develop competent performance in new settings (Med Educ 2021)

Teunissen PW, Watling C, Schrewe B, Asgarova S, Ellaway R, Myers K, Topps M, Bates J. Contextual Competence: how residents develop competent performance in new settings. Med Educ. 2021 Feb 25. Epub ahead of print.

背景:医学教育は、その環境の多様化を続けている。卒後の研修生にとって、多様な環境、特にコミュニティベースのローテーションの中を移動することは、個人としても専門職としても困難なことである。その結果、新しい環境に移動する研修生は、自分の知識、スキル、経験を活かして適応することが求められる。研修生が何に適応する必要があるのか、何が研修生に求められているのかについては、十分に理解されていない。本研究では、新しい環境に入る研修生が、ナビゲートして学ぶ必要がある特定の文脈の変化に対する意識をどのようにして育むのかを理解するために、capability approachをとった。

方法:我々は、綿密なインタビューを行い、構成主義的grounded theoryを用いた。カナダの3つの内科研修プログラムから、合計29名の研修生・最近の卒業生が参加した。すべての参加者は、地元の研修先から地理的に遠く離れた地域で少なくとも1つのコミュニティベースのローテーションを修了していた。インタビューは録音・文字起こし・匿名化された。インタビューの枠組みは、最初のデータ分析の後、数回にわたって調整された。

結果:状況に応じた能力とは、研修生が5つの重要なステージに参加する能力である。参加者はまず生理的・実践的なニーズを満たす必要があり、次に帰属意識と正統性を身につける必要があり、それが能力の再構成と適切な自律性への道を開いた。研修生がこれらの適応段階に注意を払うことは、知識と技術の基盤を利用することと、文脈の違いから新しい学習と適応が必要な場所・時期を認識することとの間を継続的に移動するプロセスによって、促進された。

結論:文脈の変更を認識し、それに応じて適応する能力は、NussbaumおよびSenのcapability developmentの概念の一部である。我々は、この重要なスキルが、現在の研修モデルでや卒後研修生が実践で受ける支援に値する注目を受けていない、と主張している。提言としては、施設間の移動の経験をデブリーフィングすることでresidentのcapability developmentをサポートすること、このプロセスを通じて積極的にresidentをコーチングするように臨床教員をサポートすることが含まれる。

個人的所感:勤務施設が変わったときの苦労をどう言語化すれば…としばしば感じていたので、結果を見て腑に落ちました。目のつけどころが素晴らしい、と感じるリサーチでした。アマルティア・センとマーサ・ヌスバウムのケイパビリティ概念をこうして医学教育研究に組み込むのだなぁ…と改めて認識させられたpaperでもありました。

Urban ideals and rural realities: physiotherapists navigating paradox in overlapping roles (Med Educ 2021)

Gingerich A, Van Volkenburg K, Maurice S, Simpson C, Roots R. Urban ideals and rural realities: physiotherapists navigating paradox in overlapping roles. Med Educ. 2021 Feb 22. Epub ahead of print.

背景:コミュニティへの帰属意識を育む地方の実践者は、留まる傾向がある。しかし、帰属するということは、隣人が患者となり、患者との非臨床的な出会いが避けられなくなることを意味する。農村部 (rural)での臨床経験は、学生を個人的な関係と職業的な関係の重なりに曝すものであるが、倫理的な実践基準は主に都市部 (urban)の状況を反映しており、農村部の状況を反映していないため、学生はそのような状況をナビゲートする準備を十分にすることができない。本研究では、このような教育活動に役立つように、農村部の理学療法士の重なり合う人間関係をナビゲートするための戦略を検討する。

方法:構成主義的grounded theoryを用いて、カナダのブリティッシュコロンビア州の農村部、北部および/または遠隔地 (rural, northern and/or remote; RNR)のコミュニティに居住・実践している理学療法士 (PT)22名を反復的に募集し、重なり合う人間関係をナビゲートするための彼らの経験を分析した。

結果:理学療法士は、日常的に、実践基準、近隣やコミュニティの期待、個人の幸福、患者の福祉に配慮しながら、重なり合う人間関係をナビゲートしている。勤務外の間は、相反する期待のバランスをとり、患者の守秘義務を守る専門職でありながら、積極的で誠実なコミュニティの一員であることなど、相反する目標を達成するために様々な責任を管理する。勤務中は、知人を治療しないと決めると、ケアへのアクセスを拒否する可能性があるが、個人と専門家の境界線を明確にすることができ、一方、治療すると決めると、(都市部の)実践基準に反するが、臨床と社会的相互作用の両方で得られた知識に基づいたカスタマイズされた患者ケアが可能になる可能性がある、という倫理的ジレンマに直面することになる。

結論:重複関係は農村部の規範である。都市部の倫理的実践基準が農村部の文脈に押しつけられているため、RNRの実務者は、臨床と社会的相互作用はなくてはならないが、仕切ることができないという逆説的な状況に置かれている。パラドックス理論のレンズを通して特定された戦略を検証すると、RNRのコミュニティでの生活と実践に内在する相反する相互に関連した目的を、洗練された認知的フレーミングで表現していることがわかる。その結果、教育活動にパラドックスの考え方を導入することは、RNRの臨床経験のなかで、学生が、倫理的に複雑に重なり合う関係性に備えるための方法として検討される可能性がある。

Exploring healthcare graduates' conceptualisations of preparedness for practice: a longitudinal qualitative research study (Med Educ 2021)

Ottrey E, Rees CE, Kemp C, Brock TP, Leech M, Lyons K, Monrouxe LV, Morphet J, Palermo C. Exploring healthcare graduates' conceptualisations of preparedness for practice: a longitudinal qualitative research study. Med Educ. 2021 Feb 22. Epub ahead of print.

背景:実践への準備(preparedness for practice; P4P)は様々な形で表現されてきたが、P4Pとは何かについての共通理解は、医療従事者全体ではほとんど存在しない。P4Pがどのように概念化されているかは重要であり、それは利害関係者がP4Pについてどのように考え、話し、行動するかを形作るからである。さらに、多様な理解があると、卒業後のパフォーマンスに対する期待が多様化する可能性がある。ゆえに本研究では、ヘルスケア学習者が、卒後の移行期の初期段階において、P4Pの概念化を求められた場合と求められていない場合の両方を探索した。

方法:本研究では、4つの分野(栄養学、医学、看護学、薬学)の学習者を対象に、個人およびグループでの入学面接(第1段階:n=35)、縦断的オーディオ・ダイアリー(第2段階:n=30)、個人およびグループでの退学面接(第3段階:n=22)を含む縦断的質的研究を実施した。フレームワーク分析を用いて、横断的・縦断的にデータを分析した。

結果:P4Pの13の概念化(知識、自信など)は、分野を超えて広く類似していることがわかった。その結果、いくつかの概念化は、概念化を求められた場合と求められていない場合の両方で支配的なもの(スキルなど)、求められた場合のみで支配的なもの(コンピテンシーなど)、求められていない場合のみで支配的なもの(経験など)が見られた。ほとんどの概念は時間の経過とともに比較的安定していたが、ある時点でのみ支配的になっているものもあった(例:第1・2段階の雇用可能性とスキル、第3段階のコンピテンシー)。

結論:本研究は、これまでの単職種の研究を拡張したものであり、より幅広い概念の配列、職種間の違い、求められた場合と求められていない場合の違い、縦断的なコホートのパターンなどを示している。我々は、医療教育者が卒後の移行期の介入において、これらの異なるP4Pの理解について議論することを奨励している。他の利害関係者の概念の探索、卒後移行早期を超えた期間にわたっての探索には、さらなる研究が必要である。

個人的所感:流行りのtranstionについてのリサーチですが、比較的多くの人数を、縦断的・質的に調査しており、なかなか興味深いリサーチでした。こういった視野でリサーチしていきたいものです。

When disruption strikes the curriculum: Towards a crisis-curriculum analysis framework (Med Teach 2021)

Govender L, de Villiers MR. When disruption strikes the curriculum: Towards a crisis-curriculum analysis framework. Med Teach. 2021 Feb 22:1-10. Epub ahead of print.

背景:COVID-19は世界的に医療従事者の訓練を著しく混乱させた。このpandemicは、小規模な規模の他のいくつかの干渉に先行しており、永続的な危機の舞台を設定している。このような危機を受け止めようとする姿勢が採用されると、カリキュラムが急速に変化し、徹底した計画と批判的な分析の機会が最小限に抑えられてしまう可能性がある。

文献からのガイダンス:このようなカリキュラムの危機対応に構造を提供するために利用可能なフレームワークが限られていることを認識し、我々は、文献を利用して危機-カリキュラム分析のフレームワークを開発した。HardenらによるSPICESモデル、Steketeeらによる4次元フレームワーク、Deverellの危機誘発学習のフレームワークを使用してフレームワークを開発した。

危機カリキュラム分析のフレームワーク:このフレームワークは、混乱に直面した場合のカリキュラム分析に構造化されたアプローチを提供する。それは現在危機の真っ只中にあるグローバルな医療専門職教育コミュニティのニーズを満たすように設計されている。段階的なガイドラインを伴うこのフレームワークは、カリキュラム分析への実践的なアプローチを必要とする教育者に適している。

結論:カリキュラム分析は危機管理の一部に過ぎないことを認識し、教育者がCOVID-19で採用されたカリキュラムの実践を改善し定着させようとするなかで、この危機的カリキュラム分析のフレームワークは、教育機関の準備を強化することとよく一致する可能性があることを論じている。

MPRO: A Professionalism Curriculum to Enhance the Professional Identity Formation of University Premedical Students (Med Educ Online 2021)

Merlo G, Ryu H, Harris TB, Coverdale J. MPRO: A Professionalism Curriculum to Enhance the Professional Identity Formation of University Premedical Students. Med Educ Online. 2021;26:1886224.

背景:大学のpremedicalの学生が、医師のシャドーイングや正式なカリキュラムを通じて臨床業務の実際に触れる機会は限られている。Medical Professionalism and Observershipは、思春期後期の重要な発達期に、専門職としてのアイデンティティ形成のプロセスを強化するために、講義、省察的ライティング、少人数および大人数のグループディスカッション、および臨床観察を利用している。

方法:パイロットセメスターには、ライス大学の2年次、3年次、4年次の学生135名が参加した。学生は、アプリケーションのプロセスを介して選ばれ、ヒューストンメソジスト病院の医師と、専門的な好み・availabilityに基づいてペアを組んだ。学生は、隔週で行われる講義とディスカッションに参加し、コース内で議論されたトピックとシャドーイングの経験についての毎週の省察を提出することが求められた。学生の評価は、カリキュラムに対する学生の知識と認識の変化を調査するために実施されました。選択された省察は、専門職としてのアイデンティティ形成のevidenceとして読まれた。

結果:講義は、学生が医療専門職におけるコア・コンピテンシーに触れる機会を増やし、医師になりたいという学生の願望に影響を与えた。省察的ライティングは、これらのコア・コンピテンシーが学生の専門職としてのアイデンティティに統合されていることを示していた。構造化された省察と講義は、医師のシャドーイングと組み合わされた場合、医療専門職としての価値観、信念、態度の統合を促進するようである。

結論:今後の研究では、このようなカリキュラムが、確立された尺度を通じて専門職としてのアイデンティティ形成にどのような影響を与えるかを示し、そのようなカリキュラムが、学生の医療トレーニングやキャリアの進展に伴う実践への準備に影響を与えるかどうかを評価することを目指すべきである。

Capturing the impact of cultural differences in residency (BMC Med Educ 2021)

Archibald D, Eyre A, Szczepanik D, Burns JK, Laroche L. Capturing the impact of cultural differences in residency. BMC Med Educ. 2021 Feb 18;21:115.

背景:卒後研修は、研修医が見習い (apprenticeship)の環境のなかで、医学的能力と専門家としてのアイデンティティの両方を獲得する期間である。状況学習が示唆するように、このような見習いの重要な側面は、研修生が専門家、つまり医師になる前に、正統的に業務に参加することができる方法である。参加を妨げる要因の一つは、学習者と臨床環境との間の文化的な違いである。本研究の目的は、文化の違いがresidnet、特に国際的な医学卒業生 (IMG)にとってどの程度障壁となっているかを評価することである。

方法:2014-15年に、ヒエラルキーの感覚、個性 vs チームワーク、リスクへの耐性などを評価するサブスケールを含む質問紙を作成した。我々はこの質問紙を、卒後教育の専門家からなるレビューパネルに提出し、residentとの"think aloud"セッションを行うことで、より洗練されたものにした。

結果:この尺度を試験的に実施したところ、Cronbachのアルファ係数は0.675であった。多くの専門分野を代表するresidentと教員の大規模なグループに配布したところ、 the Impact of Cultural Differences on Residency Experiences (ICDRE)質問紙では、カナダの医学卒業生と国際的な医学卒業生の平均的な意見が異なるいくつかの項目が明らかになった。両グループは全体的には実質的な違いはなかった、各グループ内での文化的信念の興味深い多様性が観察された。

結論:ICDREは、個々の研修医にとって課題となる可能性のある信念を同定したり、residentの集団の傾向を把握して、専門プログラムがその傾向に積極的に対処できるようにするために有用であることが示唆された。また、ICDREは、プリセプターが研修医の専門性を評価する際のアンカーとなる言語を提供し、介入型コーチングツールとしての役割を果たす可能性がある。